久留島喜内 「銀知恵の輪」 将棋妙案 第68番 1757
久留島喜内の「易しいけれど楽しい」作品群の中でもっとも有名な作品がこの「銀知恵の輪」と次回紹介予定の「金知恵の輪」だろう。
59手詰。盤面に広がる多数の駒。
そのような長手数の詰将棋に接したことのない方には,途方もなく難しい詰将棋ではないかと思われることだろう。近代将棋という将棋雑誌には長手数の詰将棋も掲載されていたが,近代将棋誌が休刊になって残った将棋世界には17手までの詰将棋しか掲載されていない。(若島さんの巻頭詰将棋はもう少し長い手数の作品も掲載されるが)
また,詰手数で難易度を区分する制度もよくとられているが,「手数が長い詰将棋ほど難しい」という意識を醸し出す原因だろう。
それはまったくの間違いというわけではないが,手数と難易度は本質的には異なるものだ。
本作は是非,盤に並べて駒を動かしながら考えてほしい。
そんなことしたら,将棋の勉強に役立たないではないかとおっしゃるむきもあるだろう。
でも,そもそも将棋が強くなったら,社会生活で何か役に立つのだろうか?
将棋は楽しいから指すのではないでしょうか。そして負けると悔しいから,なおさら勝てばうれしい。
詰将棋も役に立つから解くのではない。
でも解けたらうれしい。そして作者の考えに触れることができたらもっとうれしい。(そして……)
御託はともかく,本作は本当に簡単だ。非力な筆者でもすぐに解けた。
まず盤面を広く眺めてみる。
29飛は23香をとるしか活用法がないようだ。
しかし,そのためには26角が邪魔になっている。
49香は44香をとる駒のようだ。
しかし,そのためには47飛を動かさなければならない。。
さて本手順を進めよう。
84金、同玉、73銀打、75玉、84銀打、86玉、
82玉と銀を取られたときに銀2枚が必要なので,初手は84金と行くしかない。
銀をつなげて打つと,あっという間に舞台が整う。
玉方の斜めに並ぶ駒と,21馬の効きが通っているので,玉は31-97の斜めのラインしか動けないことに注意されたし。
95銀、75玉、84銀引不成、64玉、73銀引不成、53玉、62銀上不成、
これで桂馬を入手。
64玉、73銀上不成、75玉、84銀上、86玉、78桂、
と金を動かして…
同と、59角、
邪魔な角を消す。
同と、95銀、75玉、84銀引不成、64玉、73銀引不成、53玉、23飛成、
これで香が入手できた。
同金、62銀上不成、64玉、73銀上不成、75玉、84銀上、86玉、87香、
香を使って47飛を動かす。
同飛成、95銀、75玉、84銀引不成、64玉、73銀引不成、53玉、62銀引不成、42玉、44香、
49香がいよいよ動き出して,あとは収束だ。
33玉、43馬、22玉、23桂成、同玉、33金、12玉、21馬、
最後に舞台を作っていた馬がきれいに消えるのは見事。
同玉、23香、12玉、22香成 まで59手詰
将棋妙案についてもっと知りたい場合は次の情報にアクセスすると良いだろう。
これらの江戸時代の詰将棋については次の文献を参照している。
- 門脇芳雄 「続詰むや詰まざるや」 1978 東洋文庫
- 三木宗太 「江戸詰将棋考」 1987 将棋天国社
- 二上達也 「将棋図式集(下)」 1999 ちくま学芸文庫