詰将棋入門(30) 裸玉ふたたび

岡田秋葭 将棋月報 1942.9

伊藤看寿の「裸王」より序盤が難しい。
本日は詳細に解説する。

まずは紛れから。
看寿の11玉と違い1筋ずれているが、やはり頭から抑えたくなる。

83飛、

これに逃げたら勿論詰むし、82歩合など安い駒で合駒すると、
71飛、同玉、73飛成で持駒に金があるので詰む。
そこで玉方はこの73飛成を消すために……

82銀で不詰

73に利く駒ならよいので角金銀のどれを間駒されても失敗だ。

それでは正解はどう攻めるかというと

61飛、

横から攻めるのがうまい。
91が開いているので91飛、同玉、71飛成と横の一間龍で攻めようという構想。

92玉と逃げて広いように見えるが、

92玉、94飛、

94飛と今度こそ上から抑えると、93合なら91飛成、同玉、93飛成以下
83玉なら81飛成、73玉、64金、62玉、92飛成までだ。

そこで2手目に戻って……

71歩、

71の間駒は取られる間駒。
巨椋流にいえば揮発性の間駒だ。
角金銀などは早い。
桂か歩(香より弱い)なのだが、まずは歩の場合を考える。

83飛、82銀、

予習したように83飛には高い駒を間駒してくる。
ここから、11手詰だ。

72金、同玉、63飛引成、

82の間駒を取るために、63龍を作っておくのがうまい。
以下は81玉、82飛成、同玉、93銀(金)、91玉、92歩、81玉、83龍まで。
角合だったら、93銀に代えて64角、92玉、93歩……

そこで正解は63飛成を防ぐ駒ということになる。

71桂、

さて2手目までにずいぶん手間がかかったが、ここからは一気にいける。

91飛、同玉、71飛成、

持駒に金があるので間駒できない。
以下、一間龍の威力が爆発する。

92玉、72龍、93玉、73龍、94玉、74龍、95玉、
75龍、96玉、76龍、86歩、

途中、間駒したら金を打って押しつぶしていけることを確認してもらいたい。
85歩(桂)合が長めだが難しくはない。
玉方はなるべく引きのばそうと入玉方向に逃げていくが、86で間駒をする。
97玉なら77龍ではなく、87金と打って簡単だからだ。

ここからは折り返し。

87金、95玉、86金、84玉、85金、83玉、74龍、92玉、
93歩、81玉、82歩、同玉、94桂、81玉、92歩成、同玉、
72龍、93玉、82龍 まで35手詰

歴史的には裸玉は看寿、松本、河村についで4局目。
しかし、筆者は本局を裸玉完全作第1号と考えている。

看寿作を90度回転させたような上下一往復の楽しい手順。
1号局にして、不朽の名作だ。

「Limit 7」の第1番は本局である。

岡田秋葭に興味を持たれた方は次の情報にアクセスしてみるとよいだろう。

  • 秋葭作品集 (詰棋界第21号1954.8.10)
  • 続秋葭作品集 (詰棋界第23号1955.1.1)
  • 岡田秋葭作品集 田代邦夫編 詰パラ編集部 1971.8
  • 岡田秋葭作品集(via. 詰将棋博物館)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください