1 詰将棋の範囲
「余詰」といったり「不完全」といったりしますが、要するに「詰将棋の仲間に入れないよ」ということです。
「あなたがそういうものを創って楽しむのは自由だが、それを詰将棋とは称するのは迷惑だからやめてね」。
私は創ったものを見せ合って解いて楽しみ、評価を聞いて楽しむという範囲をわざわざ狭めていく必要を感じません。
賛同者はどうせいないだろうときりあげた1-2手余りの禁止だって、検討の余地はあると思っています。(詳しくは雑談で)
内容が面白ければ「持駒余」と表記して出題してもいいんじゃないかと思っています。
さてこのシリーズはその詰将棋の範囲にしてもなかなか共通認識にはならないし、さらに時代とともに変遷してしまう儚いものだという記述を延々と続けております。
1-3 変化長手数(変長)
ここでいう変化長手数は妙手説の時代の変化長手数とは違います。
妙手説とは作者が妙手を含む順を作意と定めることで、手数が長くても平凡な順は作意としなかったことです。
しかし、これでは客観性がありませんから詰将棋が「懸賞出題」されるようになると具合が悪いことは明白です。
そこで塚田正夫名人が「最長手数になる順を正解とする」と詰将棋界のルールを改革したそうです。
では、ここでいう変長とはなにかというと、2手変化長手数1駒余りのことです。
綿貫規約(1963.3.10)はいわゆる完全限定の作品を完全作品とします。
第4条(1)出題は原則として完全作品に限る。
しかし、ご存じのように完全限定の作品は貴重です。
(ハンドブックしか読んだことのない方は驚かれるかもしれませんが)
そこで第2項で
第4条(2)准完全作品の出題はこれを許容する。
としています。
そして准完全作品としていくつか恕限度を設定しています。
その一つが変長です。
第10条(2)(ロ)作意外最長順 応手最長順に手余りの存する場合はこれを准詰とし、作意とする次位長数順で手余りのな言うものを本詰とする。
また収束時に合駒をすれば2手延び1駒余りとなる場合はこの手順を准詰とし、合駒をしない手順を本詰とする。
- 33金、21玉、32金打、11玉、22金まで5手歩余
- 33金、41玉、42金打まで3手
第10条(2)(ロ)の前半は【図17】を許容しようというものです。
解答はどちらも正解(上が准詰で下が本詰)だよといっています。
変長1 合駒無関係の場合https://t.co/WkaZWQhyB3
— 地蔵菩薩 (@kazemidorinew) June 27, 2020
今までオイラの感覚より最近は「キビシイナ!」という結果が多かったというより全部だったのですが、これは完全アウトかと思ったら、まだキズという投票もありました。
やはり人により感覚はそれぞれなんですねぇ。
後半は次のような場合です。
この収束を用いた煙詰も何作かあったはずです。
- 32飛成、22合、23桂成、11玉、22龍まで5手駒余
- 32飛成、11玉、23桂生まで3手詰
変長2 合駒すると駒余りhttps://t.co/oKQDyNgj8O
— 地蔵菩薩 (@kazemidorinew) June 27, 2020
アンケート始めた頃は上の変長1よりもこちらの方が不完全という票が多くて意外でした。
最終結果は順当なものになったかなと安心しました。
(自分の感覚が変ではないと)
私が詰将棋を始めた頃は、変長は普通に許容範囲として認められていた。
解答者としても、n手で駒が余ったらn-2手で駒の余らない順を探せば良いのだから、特に困ることはないと思っていたし、実際困った経験も無かった。
5手詰の作品をわざと変長を組み入れて発表したこともある。
実質7手詰になるのだから短手数ではその差は大きい。
狙いは当たって珍しく首位をとった。
これが最初に得た完成図。余詰防ぎの48歩が不満だった。
風みどり 詰パラ 1978.10
発表図。2手目合駒の順を7手駒余りに変更。「この変化はプラスの作用をしている」と主幹に解説された。
わざと変長つくって難解作
あなたはどう思う?— 地蔵菩薩 (@kazemidorinew) June 27, 2020
もっとボコボコに批判されるかと思っていましたが、皆さん優しい方が多い。
現在はルール上では変長許容なのだが、各担当者の判断でほとんど採用されないので実質的に不完全扱いされているという現状です。筆者も大学院担当の時に変長作品は1作か2作しか採用しなかった記憶があります。(でも看寿賞を獲れてめでたしめでたし)
まだ入選4回目で、評価が気になっていた頃の話です。
その後、橋本哲さんに「変長を認めるとこんなことが起こるんだぜ」とある図を見せられました。
その図は覚えていないのですが、当時は私は7手詰ばっかり作っていたので、すぐにその図を7手詰に改作しました。
その図だったら覚えているんですね。
この図は一見駒余りの順しか見つかりません。
しかし玉方の応手によっては7手で駒が余らない手順があるのです。
27馬、19玉、16龍、17飛合、同龍、29玉、19飛まで7手詰
17歩合だったらどうなるのかって?
もちろん9手駒余りの変長です。
(最終手余詰許容も使ってます)
変長利用の作意探しパズルhttps://t.co/DFAP6zZWX1
— 地蔵菩薩 (@kazemidorinew) June 27, 2020
加藤さんはルールの隅っこを突っつくような創作をする人がいなければ、もっとルールはスッキリできるのにとどこかで書いていましたが、パズルを作る人はそーゆーことをやりたいものだと思うんですね。
でも、変長禁止としてしまうと「シンメトリー」みたいに抜群に面白い作品が陽の目をみなくなってしまうので、筆者は反対でございます。
追記(2020.7.3)
Tweet1980年頃、ここから逆算した図を投稿して採用されました。結果稿でも特に触れられませんでした。そんな時代があったことを思い出しました。 pic.twitter.com/067RzfDiqy
— 詰将棋ファン (@misimakeita) June 28, 2020