恒川純吉 「白砂」 詰パラ 1989.6
200手近い長編だが,100手以上はスイスイ手が進む。そこまで来たらもう一息。必ず解ける。
まず盤面を眺める。
一段目のと金ベルトは玉を左右に移動させる機構だ。
8筋の3枚の香が3枚の桂馬を質にしている。
右下の飛角角が仕掛けっぽい。
21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、84香、
まずは左に追って質駒の桂馬を入手。
同飛、81と右、72玉、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、14桂、
次の質駒を獲るには84飛を動かさなければならない。
右に追って14桂。(ん?駒が増えない)
同飛、21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、86香、
合駒は桂・香が残っている。(歩切れ!)
香合だと同香と取って83香と打てる。右に追って14桂まで。
84桂、同香、同飛、81と右、72玉、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、
14桂、
合駒で得た分だけ,持駒が増えた。
同飛、21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、88香、
もう1枚合駒を入手できるようだ。
84桂、同香、同飛、81と右、72玉、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、14桂、
これで8筋の仕掛けは使い果たした。
次は右下の大駒を動かし始めるに違いない。
同飛、21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、89飛、
89飛と活用するのが最初に浮かぶ方法だ。
そしてそれ以外には見当たらない。
84桂、同飛、同飛、81と右、72玉、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、14桂、
飛車では質駒を取っていないので持駒は増えない。
ということは29飛を消去しただけだといういことだ。
これが攻方のメリットになるとしたら29飛が邪魔駒であったということだろう。
すなわち,次の手は29角だ。
そのためには92玉の形にする必要がある。
同飛、21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、81と左、92玉、29角、
74歩などと合駒すれば飛車効きが消えるので84桂で詰む。
同とで19角の効きが通る。
後はこの角をどう活用するか。
同と、91と、82玉、81と右、72玉、84桂、
92歩が消えてしまったので91とがとられるのではないかと怖い。
しかし同玉には73角成ができるようになっている。
82香、83桂、92玉、93銀成、同玉、85桂、92玉、(94玉は95歩,85玉,76金,96玉,86金,97玉,88金まで)91桂成、同玉、92歩、同玉、93歩、91玉、81と、同玉、63馬、72歩、92銀まで
63銀と99金の配置の謎がここで分かる。
117手目14桂で飛車を動かしておいたのは,この変化のためだったのだ。(手なりで進めたが後から意味がわかるパターン)
同飛、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、13香成、
ということは,右辺で手作りをするために,84桂で飛車を動かすのは勘でわかる。
さて19角を働かせるには73角成は考えにくいので55角または46角で右辺の玉に王手すると予想できる。
15香の配置,16金26金の配置も収束に備えたものだろう。
そこで13香成という手を試してみる。
同玉、25桂、22玉、33桂成、
同玉に46角を考えるが,24歩で困る。25桂、22玉、33桂成、同玉……飛車の効きもあり絶望だ。
ならば次は55角を目指す。
33桂成は55角が王手になるように穴をあけるのと,もうひとつ1歩を入手する目的だ。
この33桂成の時期は非限定。
同玉、25桂、22玉、21と左、32玉、31と左、42玉、41と左、52玉、51と左、62玉、61と左、72玉、71と左、82玉、83歩、
55角とする前に入手した歩を活用して,飛車を封じ込めるのが最後の鍵だ。
同飛、81と右、72玉、71と右、62玉、61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、31と右、22玉、55角、
これでいよいよ終局だ。
44香、同角、同歩、21と右、12玉、13香 まで191手詰
「はじめて100手超えが解けた」という声が届くことを期待している。
急に発表年月が現代に近づいたことに疑問を感じる方もいるかもしれない。
これは作者によると「30年前の作品」ということなのだ。
パラ400号記念の詰将棋博覧会に出品された作品。
筆者も同じような筋で作ったことがあるが,(図面を失くしてしまったので曖昧だが)100手にも届かなかった。200手近くまで粘った本作はよく練られているといえよう。
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