伊藤看寿 『将棋図巧』第5番 1755
本図は人を驚かすような要素はないので、あまり紹介されることもない。
駒場和男氏が「詰将棋トライアスロン」で取り上げていたので見てみたが、91桂の抜けた誤図についての話だった。
手が狭いので非常に易しい。この作品で「俺も看寿を解いた!」と言えるようになろう。
粘っこい持駒が無いので初手は63角以外に見当たらない。
もちろん同金は同馬で簡単。
63角、84玉、
早くも打歩詰の局面。
当面85歩を打つことを目標に手を進めることができる。
82飛がいなくなれば85歩と打てるので……。
93飛成、同玉、92飛不成、
打歩詰には不成という諺(?)を忘れずに92飛生とする。
これで当面の目標だった85歩が打てる。
83玉、84歩、同玉、85歩、83玉、
持駒も潰えたので盤面の駒を活用するしかない。
85歩が拠点として活躍することになる。
82馬、同銀、74角成、
飛車を取らせない74角成は詰将棋では定番中の定番の捨駒。
72玉は62銀成、同銀、同香成、同玉、63金以下。
同玉、94飛成、73玉、
さて、ここまで来れば残りは初心者向きの5手詰。
62銀不成、同銀、74龍、同玉、84金 まで21手詰
『図巧』の中にはもっと短手数の作品もあるが、悩ましい紛れも長い変化もない本局が解きやすいはずだ。
しかし易しいからといって、決して品質が劣るわけではないことは理解していただけたはずだ。
指先から伝わる快感。
「どう、この詰み筋。いいやろ?」
「いいねぇ」
このコミュニケーションが詰将棋の本質なのである。
250年も前の看寿とコミュニケーションがとれる詰将棋の面白さよ。
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