創棋会の第2作品集。まだ「壮棋会」だ。
厳選20人の各5局で100局。
第1作品集『あさぎり』と何人か入れ替わりがある。
新しく参入したのが、山本勝士、谷口均、上田吉一、伊藤果、若島正。
編集担当が吉田健氏。
というわけで、色々とキッチリと作られている。
解説が作者毎に整数頁で割り当てられている。
そして解説頁を見ても☆とか▼とか※とか、ごちゃごちゃした約物は一切なく、とてもスッキリしている。
吉田氏がこう書いている。
原稿執筆について、色々と細かく形式上のお願いをした。
おそらくは、発表時の解説や解答者の短評の引用はなるべく使わぬようにと通達を出したのであろう。
『あさぎり』は発表時の解説の引用などが複雑にコラージュされていて、それはまた雑然としたバザールをそぞろ歩くような楽しい雰囲気なのだが、『凌雲』はこれが同じグループの作品集かと思われるほどイメージを一新した。
そして更に……。
一会員五作ずつの選局が、全部自選であることを承けて、解説もすべて作者自身にペンをとっていただくことにした。
会員が皆が皆、筆が立つとは思えない。
中にはこの通達を承けて目の前が真っ暗になった方もいらっしゃるのではなかろうか。
しかし、吉田健氏はわかっているのだ。
読者が読みたいのは作者自身の言葉だということを。
編集者として自分を選んだ以上は、文章を絞り出してもらう。
自作を語ることは、易しいようで実は難しい作業である。むやみに誉めもできず、かと云ってけなしもならず……。しかし当然、第三者の目にはうかがい知ることのできない作者だけの実感というものがある。作品に対する苦心がある。思い出がある。愛情がある。それらを吐露して原稿をまとめていただきたいと希った。
かくして創棋会作品集の内、最も読み甲斐のある1冊が誕生した。
もちろん作品も充実している。
例えば上田吉一のラインナップは以下の通り、贅沢の極みだ。
- 17角・37角
- 「モザイク」
- 「五月晴れ」
- 「オーロラ」
- 72成銀