詰将棋のルール論争(1) 余詰の禁止

詰将棋のルールに意見が一致しない点については別エントリーでと書いた。
でも、入門者向けに書くのは難しいし、だらだら長くなるし、なにより面白くない。

こっちで不定期に書き綴ってみて、もしなんとかまとめられそうだったらガイダンスに採用することにする。


1 詰将棋の範囲

ルールは出題者側のルールと解答者側のルールに分けられます。
まずは出題者側のルールから見ていきましょう。
詰将棋として出題が許されるとは詰将棋の定義を定めることです。
つまり、どういうものを詰将棋として認めるかということです。

1-1 余詰の禁止

門脇芳雄「続詰むや詰まざるや」によりますと、元祖詰将棋作家である初代大橋宗桂の作品を見ると、詰め上がりに駒が余る作品はあっても余詰がある作品はないそうです。

つまり余詰の禁止がもっとも最初に作られた共通認識であるようです。
たった1つの道筋しか詰めに至る手段がないという感動–美意識–が根底にあるのでしょうか。

しかし、この点について完全に皆の意見が一致しているかというと、そうでもありません。

1-1-1 成・不成非限定

【図1】

    22銀、12玉、13銀成、同玉、23金まで5手詰
    22銀、12玉、13銀不成、同玉、23金まで5手詰

銀が成るのと成らないのとでは異なる着手ですから、これは厳密には余詰です。
しかし、この非限定を「余詰だ」と咎める人はほとんどいないでしょう。

せっかくネットですから、アンケートをとってみましょう。

追記(2020.06.03)思ったよりキズと感じる人がいますね。厳しい世の中になったものです。余詰とまで感じる人がいるのには驚きました。

線駒(飛角香)を合駒と交換する順でも、この成・不成非限定は頻繁に起きます。

でも、何故これくらい構わないだろうと感じるのでしょう。

筆者はこう考えます。
【図1】でいえば「金を喰って詰み」ということなのだから成って取っても不成で取っても同じことじゃん。
ルールというのはコンピュータに教えることもできるような客観的なもののはずなのに、「手の意味」を考えてしまう。
これを筆者は内なる妙手説とよんでいます。

【図2】

【図2】はいやがらせ不成とよばれるものです。

    12飛成、同玉、23金、11玉、22金まで5手詰
    12飛不成、21玉、22飛成、同玉、23金、11玉、22金まで7手詰
    12飛不成、21玉、22飛不成、11玉、12飛成、同玉、23金、11玉、22金まで9手詰

同じ、成・不成非限定でも、この図ですと意見が分かれてきます。

追記(2020.06.03)現象としては同じなのですが,この場合はやはりキズと感じる人が増えています。余詰という意見もでることは予想通りでした。いずれにせよ,出題可か出題不可の判断という一番の基本の部分でさえ,すっきりとは意見が一致しないという事実を確認しておいてください。

ちょっとだけ補足します。
詰将棋のルールに「着手は最短のものを選ぶ」と書いてある場合があります。
これは誤解されやすいのですが、変化手順をだらだら伸ばして長手数にして解答し正解を主張することを排除するためのルールで、筆者は「玉は最長になるように逃げる」に内包されていると考えています。(なのでnoteの「詰将棋のルール」には書いてありません。)
これは現在では標準的な考え方です。

ですから、上の図で「手数が伸びてしまうから12飛成としなければならない」ということはありません。

(この項まだ続きます)

「詰将棋のルール論争(1) 余詰の禁止」への3件のフィードバック

  1. 禁じられたテーマに踏み込んでしまいましたね(笑)
    個人的にはルールは「許される範囲で甘く」がよいと考えます。
    お示しの手順の非限定を、たとえば「余詰」とルールで厳格に決めたとしましょう。それによって詰将棋は衰退の道を辿るしかありません。図1の手順が使えないのですから当たり前。
    「そんなことでは作家の矜持が廃る」と考えるプライドの高い方は、ご自分の創作の中で厳しい矜持を維持すればよい。

    ルールでは甘くし、こうした非限定が許せない方は、評価ですとか受賞審査などで減点すればよい。そんな感じですかね。

    1. いやいや新しいルール案を示そうとか詰将棋界に意見を申し上げたいとか、そういったつもりは微塵もありませんから。
      詰将棋入門者に「なぜルールが決まらないのか」を説明しておきたいだけのテキストです。
      でもオイラが書くんだから今までに何回か書いてきた「詰将棋はパズルを目指してパズルになれなかった心ならずも芸術作品」という主張を敷衍することになっていくのかな。

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