伊藤看寿 『将棋図巧』第50番 1755.3
『図巧』百番中最短の9手詰。
ただし、妙手説の時代の作品なので変化は長い。
49角と逃げ道を塞ぎたいが、26玉とされ15~24の逃走路と37~48(46)の逃走路を同時に押さえることは不可能。
では、何処から手をつけるのが正解か。
45角、
桂馬の効きに限定打。
これは23に利かす意味だ。(例えば26玉なら、15角、同玉、16龍、24玉、23飛まで)
同桂、
作意は同桂。
(ただしここ同とや38玉、36合駒の変化は9手以内に収まらない。)
これで15玉には33角と打つことができるようになった。
37飛、
49角に26玉ならば16龍で詰ましてしまおうとの狙い。
同桂不成、
不成で取る狙いは明解だ。
49角、
それでも初志貫徹。
同桂成、
49が埋まったので、あとは収束である。
17龍、38玉、37龍 まで9手詰
第46番の発想の元になった作品であろうか。
本作も(9手詰だから当然だが)冒頭で狙いを一気に実現する。
途中に別の手を挟まず、大駒の3連打ち捨てで桂馬の3連跳びを表現した。
玉方の駒の軌跡テーマは現代でも人気だ。
ウムノフは配置された駒を美しく捨てる演出だ。
それでは持駒の打捨てを美しく見せる演出は?
それは「わざわざ取られるようにしてから打ち捨てる」だろう。
本作では3手目37飛と5手目49角がそれに当たる。
初手はもちろん「わざわざとられる位置に打つ」だ。