図巧第39番は大発展し、一分野を築くことになるが、連取りする駒を歩から香などに替えたり、主駒を角から飛車に替えたりしない、謂わば直系の子孫はさほど数多くない。入手する歩を処理するアイデアといえば看寿の角不成が自然で、これに何を付け加えても蛇足ではないかと思わせる力を持っている。
歩の連取りが発展するのは逆順に連取りする上田吉一「五月晴」(1972)以降だ。
歩以外の駒を入手できるので様々な発展が可能になった。
ここでは直系の子孫–即ち主駒が角で歩を近い方から取って行くタイプ–で記憶に残る作品を並べてみよう。
飯田岳一 詰パラ1979.4
親駒の飛車を打ち直す。
橋本孝治 詰パラ1986.3改
こちらは主駒の角を打ち直す。
安心の橋本孝治品質。
余詰修正の際に22歩まで連取りする形に改良したのは流石。
(ただしここだけ成生非限定?)
山本昭一「スターダスト」 詰パラ1981.5
親駒の香を打ち直す間に飛車合もはいって絢爛豪華な印象。
そして歩を2列も連取りするというのが凄い。
X方向に2列連取りする作品はそれまでにもあったが平行な2列は本作しか知らない。
収束も連取りの意味づけも推敲が尽くされている印象でいかにも山本昭一作品だ。
荒木秀雄 近将1990.1改
親駒も主駒も打ち換えたりしない・合駒も登場しない。
それなのに華麗な新作に仕上げている所が驚きだ。
馬屋原剛 詰パラ2012.11
荒木作を並べたら、この作品も並べなければいけないだろう。
\(馬鋸+連取\)という足し算なので「歩の連取発展史」としては傍流になるのかもしれないが、なんといってもシンプルなアイデアを見事に図化している。
この短い収束で馬鋸、連取りの2つの意味づけをクリアしているのが鮮やかだ。
もちろん狙いは20年以上君臨してきた荒木作の「角生22回」の記録の更新。
作者渾身のボケも忘れられない。