柏川悦夫『駒と人生』第29番 鞠藻集1951.11
詰将棋入門(42)金そっぽのなかで触れた柏川悦夫の金外方。
この詰将棋入門のタイトルは毎回ネタばらしで矛盾を感じるのだが、入門者以外には既にご存じの作品を並べているだけだからさほど問題はないかもしれない。
実に自然な初形。
33桂ももちろんだが、攻方の37桂も見慣れた位置だ。
本作、なんといってもこの自然な初形に価値がある。
さて、橋まで追い詰めたが13玉から24玉と脱出されるのが心配な局面。
まずは自然な着手である33金を試みてみよう。
33金、
【紛れ図】
44歩がなかりせば、35角成とこちらの逃げ道を封鎖することができるのだが……。
13玉、22龍、24玉、23龍、35玉、
【失敗図】
かくして逃亡確定である。
正解は初手より
41金、
なんと逃げ去ろうとする玉から離れていく41金!
22間駒は同飛成、同玉、31角成、12玉、13香までだが、33金だったらそもそも間駒が効かなかったのだ。
なぜ、このような手が成立するのだろうか。
13玉、22飛成、24玉、33龍、
24玉と逃げださんとする玉に対し、23龍ではなく33龍と追えるのが妙手41金のタネだ。
35玉ではなく15玉とさらに逃げることも可能だが……
35龍、16玉、25龍、17玉、19香、18合、44角成まで詰み
【変化図】
脂気のない持駒であるがきちんと捉まっている。
そこで作意は33龍に同玉となる。
(33)同玉、42角成、
また34玉とたたれてしまうのではないかと不安が残るが、
34玉には36香、35合、26桂でぴったり捉まっているのが不思議だ。(44歩、37桂の配置の素晴らしさよ!)
あとは自然に追っていけば詰む。
22玉、34桂、12玉、13香、同玉、
25桂、12玉、
22桂成、同玉、31馬、12玉、13桂成 まで19手詰。
いかにも何か出るゾといった初形から派手な手が出現しても人は驚かない。
さりげない形から意表を衝く手が出現させることが重要なのだ。
詰将棋の教科書にはそう書いてある。
が、言うは易く実現は難しい。
柏川悦夫のこの作品は未来永劫輝き続けるように思える。
一生に一局でいい。こんな作品が残せれば、生まれて生きた意味がある。そう思わせる傑作。
全ての駒が「これしかない配置」として光輝く美の極致!