詰将棋入門(130) 歩七連合

山中龍雄 近代将棋 1968.6

例によってネタばらしのようなタイトルだが、お許しを。

まずは美しい作意を鑑賞しよう。

16飛、


いきなり夢のような応手が始まる。

   26歩、

これを取る一手だ。
するとまた

同飛、36歩、


どんどん歩を中合してくる。

同飛、46歩、

こんなに歩をもらっていいのか?

同飛、56歩、

しかし玉方はなんのために中合してくるのか……それは後ほど。

同飛、66歩、

詰将棋は持駒が余らないように作る仕来りだが、こんなに歩を消化できるのだろうか。

同飛、76歩、

これで最後だろう。

同飛、86歩、

これで歩の七連合が成立した。
これは盤の大きさから考えて最大値なのでこの記録は破られることはない。

85角、同玉、86飛、同玉、

さてここから持駒を使い切る第2段落だ。
4手サイクルの歩の連打が始まる。

87歩、75玉、76歩、同玉、
77歩、65玉、66歩、同玉、
67歩、55玉、56歩、同玉、
57歩、45玉、46歩、同玉、
47歩、35玉、36歩、同玉、
37歩、25玉、26歩、同玉、
27歩、25玉、

あんなにあった歩をたちまち使い果たして、手駒は金1枚。
26金では同角で絶望だ。

16金、

コビンから金を打つ。
あとは一瀉千里に追い込んでいけば終了。

   35玉、26金、45玉、36金、55玉、
46金、65玉、56金、75玉、66金、85玉、
76金、96玉、86金 まで59手詰

無駄な手は一切ない。

さて、それではなぜこのような歩の7連合が成立するのか、その仕組みをみていこう。

初手96飛に普通に86歩合だとどうなるのか。

これは簡単だ。

85角、同玉、76金、

以下96玉に86金までだ。
76金と打たせないために86金合としたら
85角、同玉、76飛、
で金が2枚入るからベタ打ちで詰み。

それでは2手目1間離して76歩合ではどうか。

やはり角を切っていくしかない。

85角、同玉、86歩、75玉、66金、

86歩に同玉は87金以下なので76玉と躱すが、やはり66金から押し込まれて詰んでしまう。
どうも飛車と歩の間に金を打つ余裕があるといけないようだとお解りだろう。

念の為に2手目66歩も確認しておこう。

85角、同玉、86歩、75玉、76歩、65玉、56金、

やはり同じだ。
歩の数はまだ残っているので、同じ理屈で飛車にぴったり接する位置に歩の間駒をしなければいけないという仕組みだった。

と、これが歩7連合の原理だが、この原理を思いついたからといって簡単に詰将棋作品になると思ってはいけない。
例えばこの図で二段目の2枚のと金は何のための配置か不思議に思わなかっただろうか。
もちろん作意ではまったく動かないし、94飛がいるから玉の可動範囲は五段目と六段目だけではないのか?

実はと金の配置は2手目36歩合の変化で必要になる。

85角以下歩を連打していくのは同じだが46歩に56玉と持駒を極力減らせてから後戻りする手がある。

54飛、66玉、57金、76玉、67金、65玉、56金、


なんと飛車を取らせてしまう。

   54玉、14飛、44飛、65金打、63玉、
62と右、53玉、31角、42歩、54歩、

35桂が余詰防ぎだけでなくこの変化にも働いていた。

さらに詰将棋として成立させるには余詰との戦いも当然ある。

例えば初手から歩を取るより金を取りたくならないだろうか。

85角、

金と歩がたくさん持駒にあるのだから、先程の変化と似たような形だ。
86歩に同玉などと取れば16飛とされて簡単に詰む。

   同玉、86歩、75玉、76歩、65玉、
65歩、55玉、56歩、

さて56歩に対する応手は4通り。
正解は66玉とここで後戻りすると不詰。
他は全て詰んでしまう。

初手に16飛と歩を取るが、これも不思議に思わなかっただろうか。
持駒に歩が5枚もあるのにさらに初手から歩を取るなんて。
なんで持駒歩6枚にしておかなかったんだろう。

答は持駒歩6枚だと、上の順で66玉以下詰んでしまうからだ。
歩1枚の差でなんとか凌いでいるのである。

明快な歩7連合の原理を発想するのも凄いが、それを実現するためには変化と紛れの交錯する広い空間を緻密に読み切る努力も必要なのである。

さて最後に課題を。

それでも尚、この作品には変同が存在する。
その変化を見つけて欲しい。
(分かった方はコメント欄に)

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