詰将棋つくってみた(71) 課題16:移動合

課題16:移動合を含む詰将棋を創ってください。

  • 未発表作に限ります。
  • 投稿先はkazemidori+kadai@gmail.com
  • 締切は3月30日(水)
  • Judgeは柳原裕司さんです

移動合とは

間駒には揮発性のものと粘着性のものがある。
しかしどちらにせよ持駒から盤上に駒を持ってくるということは、自分の勢力が増えることだから有利になる。
そこを敢えて盤上の駒を合駒に活用するのが移動合である。
一見有利な打ち合を捨てて移動合をするのだから、これは玉方の妙手として演出することが可能であるということだ。
それではどのような場合に移動合が出現するのか、主要な状況を見ていこう。

例1 退路を空ける移動合

32飛成、22金、24桂、11玉、23桂、同金、12龍まで7手詰

22合だと24桂までの3手詰になってしまう。
11の退路を占有している11金を間駒に活用することで移動し、玉の退路を確保するわけだ。

例2 捕獲を避ける移動合

15桂、12玉、23金、同金、32飛成、22金、23桂成まで7手詰

22合だと23桂成まで金が余る。
この例では最終2手前なので単に「駒を残さない詰上り」に協力しているだけに見えるが、一般にそこにいたら将来捕獲されるので間駒のチャンスに移動させて捕獲を免れるという表現ならばどうだろう。
好手になる可能性が見えてこないだろうか。

例3 玉方の邪魔駒をピンすることで利きを無効にする

44飛成、34馬、35龍、同馬、25歩、同馬、23銀成まで7手詰

34合だと、25歩、同馬、23銀成まで。
16馬が玉方にとって邪魔駒なのだ。
いなければ打歩詰で逃れることができる。
そこで34馬と移動合することによって自らピンされることによって25への利きを無効化する訳だ。

例4 その駒の利きが必要な移動合

17龍、18角成、28銀、29玉、38銀、同玉、37龍、49玉、39龍まで9手詰

18歩合なら28龍まで。
18金合なら28銀、29玉、18龍、同角成、39金まで7手詰。
そこで28に利きがあり、かつ取られても大丈夫な馬の移動合となる。

純粋に馬の利きが必要な場合や、持駒にないので盤面の駒を代用する場合などいろいろあるだろう。

さて、しかし以上の例題をみても、どこが面白いの?という感想しか持てないことだろう。
今回Judgeを引受けてくださった柳原裕司さんの作品を観ていただこう。

柳原作品に見る移動合

柳原裕司 詰パラ1985.8

25金打、23玉、43飛、33香、34金、同玉、
45飛成、23玉、14角、同玉、25龍まで11手詰

退路を空ける移動合。
この手自体は妙手ではないが、この手が後方の好手、特に初手の金の重ね打!を生み出す切掛になっている。

柳原裕司 詰パラ1991.9

53飛成、23飛、同角成、25玉、24飛、15玉、
14馬、同桂、25飛、同玉、23龍、15玉、
24龍まで13手詰

退路を空ける移動合。これを同角成ととった途端に、23馬が邪魔駒になっており、獲得した飛車を活用してこの23馬を消去するという誰もが納得できる手順構成。

柳原裕司 詰棋めいと1985.2

36桂、同馬、43角成、54馬、34金、14玉、
32馬、同馬、24金まで9手詰

退路を空ける移動合。
しかも本作ではただの移動合ではなく移動中合になっており、より妙手感が高い。
さらにそれを取らずに捨駒で動かしてしまうことがまた素晴らしい。

柳原裕司 将棋ジャーナル1986.1

13角成、36金、26桂、45玉、25飛成、35金
36龍、同金、46金、同金、23馬まで11手詰

36金は退路を空ける移動合。かつ移動中合だ。
35金は捕獲を避ける移動合。かつ移動捨合になっている。
その後も攻方の捨駒でさらに同じ金を2回動かし、簡潔な配置から躍動感ある攻防が出現する傑作だ。


「未発表作」とあるけれどtwitterで流した作品はダメですかと質問がありました。
昨今はtwitterも既発表とする風潮ですが、つみき書店はそんなに厳しくしても仕方ないのでインプレッション3桁まではOKとします。(1000を超えていたら既発表扱い)

柳原裕司 詰パラ1985.8

柳原裕司 詰パラ1991.9

柳原裕司 詰棋めいと1985.2

柳原裕司 将棋ジャーナル1986.1

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