前回登場したアテネのアイギス(神楯)には中央に醜い顔がある。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『メドゥーサ』(1595-1596年頃) ウフィツィ美術館所蔵
レオナルド・ダ・ヴィンチ『メドゥーサの頭部』(1600年) ウフィツィ美術館所蔵
これは装飾品ではなく、アテネの援助によってペルセウスが退治したメデューサの首である。
メドゥーサの首を切り落としたペルセウス。アントニオ・カノーヴァ作『メドゥーサの頭を持つペルセウス』(1800年頃) バチカン美術館所蔵。
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復習しよう。
ペルセウスはアテネとヘルメスの援助を受けて、まずゴルゴー三姉妹の上の姉妹であるグライアイ三姉妹の元を訪れ、彼等を攻略する。彼女らにゴルゴー三姉妹退治の方法を教わり、唯一不死でない三姉妹のうち一番若いメデューサ(女王)の首を斬る。顔を見た者を石にする力は首だけになっても有効で、この強力な武器を入手したペルセウスは帰り道に海の怪物を退治してアンドロメダを妻に得る。
ギュスターヴ・ドレの絵画『アンドロメダ』(1869年)。 個人所蔵。
www.artpassions.net, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19155による
さらに叔父の一党もすべて石にして、アルゴスの王になる。
このペルセウスの話もこの後、ディオニソスと戦い勝利してしまうとか、その際にアリアドネを殺してしまうとか謎な話が続くのだが、それはまたいつか。
この話、いかにも他民族を征服していった英雄譚の匂いがする。ゴルゴー三姉妹は征服された姉妹都市であろうか。
メデューサは本来は古い大地女神で厄除けの力を有した。
ギリシャ神話に編み込まれるなかで、ポセイドンとアテナの神殿で交わり、アテナに激怒され自慢の髪を蛇とされたという話が作られたそうだ。
戦争に負けるということは、その神々までも殺されてしまうということなのだろう。
古い神話を語ることを禁じられ、新しい話を繰り返し聞いて育つ子どもたち。
やがてその民族は消えていってしまうことだろう。
メデューサの顔は建物の守り神として柱の上などに飾られ、それが日本の鬼瓦となったという話もある。
トルコのエフェソス遺蹟にあるハドリアヌス神殿のメデューサのレリーフ
写真はナザールボンジュウというトルコのお土産。
これもメデューサが元になっているとあるサイトには書いてあった。
下の写真はトルコイスタンブールの地下貯水池にあるメデューサ頭部の像。
なぜ逆さまなのかはわからない。
下の写真はベルサーチ。これなんでメデューサなんだろう?
それに髪の毛、蛇なのかな。
最後はシチリア自治州の州旗。シチリア島の3つの岬を表すトリナクリナ(三角形)の中央に描かれているのはメデューサであるという。
麦の穂が飾られており、大地の女神らしい姿だ。
やはり美人だったのだろう。
だってその顔を見て凍り付いて目が離せなくなるのは、どう考えたって美人に決まっている。