植田尚宏 近代将棋1979.8
\(4\times4\)の小さな世界で繰り広げられるファンタジー。
そういうアンソロジーをいつか編みたいと思っているが、本作はそのなかでもひときわ輝いているルビー(紅玉)だ。
15手詰。
平凡に攻めてみよう。
33銀、21玉、23龍、11玉、
【失敗図】
雪隠に潜られて
追撃手段がない。
手持ちが桂。
ということはこれを活かすために、3手目に工夫をする。
(21玉に)24龍、
一路離れて24龍と王手するのが好手だ。
23桂と打つ場所を確保している。
11玉、23桂、
【変化図】
以下31桂成で駒余りの詰みとなる。
つまり玉方にも対抗手段が残っているという訳だ。
攻方が23を空けておきたいのなら、23を埋める中合(ちゅうあい)がある。
23歩、
これを同龍では【失敗図】に持駒歩1枚増えただけ。
そこで清算する。
22銀成、同銀、同角成、同玉、14桂、
【変化図】
これで寄っていることを確認されたい。
32玉は33銀。
31玉は33龍から22桂成。
これは間駒が歩でなくてもほぼ通用する順だ。
間駒は上の33龍を阻止する駒、もしくはその前の22角成を同☖と取れる駒だ。
それはいずれにしても金と飛車。
(24龍に)23金、
しかし23金では…
同龍、11玉、22金、
【変化図】
中合はタダ捨ての間駒だということを忘れてはいけなかった。
そして最後に残った駒が正解なのである。
23飛、
この狭い空間は、飛車が使いにくい空間であった訳だ。
それにしてもインパクトのある中合であることよ。
同龍、11玉、
もちろん、これで終わりではない。
今度は攻方が好手を見せる番だ。
21龍、
同角は23桂の1手詰。
同玉、11飛、同玉、
入手した飛車を遣って、23龍を原型消去した。
23桂、21玉、31桂成、同玉、32銀打まで15手詰
「完璧」と評したいが、これは本来人を賞賛する言葉。
こんなのはどうだろう。
「植田氏の璧」と名づけたいくらいの作品だ。
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