詰将棋入門(191) \(4\times4\)の宝石

植田尚宏 近代将棋1979.8

\(4\times4\)の小さな世界で繰り広げられるファンタジー。
そういうアンソロジーをいつか編みたいと思っているが、本作はそのなかでもひときわ輝いているルビー(紅玉)だ。
15手詰。

平凡に攻めてみよう。

33銀、21玉、23龍、11玉、

【失敗図】

雪隠に潜られて
追撃手段がない。

手持ちが桂。
ということはこれを活かすために、3手目に工夫をする。

(21玉に)24龍、

一路離れて24龍と王手するのが好手だ。
23桂と打つ場所を確保している。

   11玉、23桂、

【変化図】

以下31桂成で駒余りの詰みとなる。
つまり玉方にも対抗手段が残っているという訳だ。

攻方が23を空けておきたいのなら、23を埋める中合(ちゅうあい)がある。

23歩、

これを同龍では【失敗図】に持駒歩1枚増えただけ。
そこで清算する。

22銀成、同銀、同角成、同玉、14桂、

【変化図】

これで寄っていることを確認されたい。

32玉は33銀。
31玉は33龍から22桂成。

これは間駒が歩でなくてもほぼ通用する順だ。
間駒は上の33龍を阻止する駒、もしくはその前の22角成を同☖と取れる駒だ。
それはいずれにしても金と飛車。

(24龍に)23金、

しかし23金では…

同龍、11玉、22金、

【変化図】

中合はタダ捨ての間駒だということを忘れてはいけなかった。

そして最後に残った駒が正解なのである。

   23飛、

この狭い空間は、飛車が使いにくい空間であった訳だ。
それにしてもインパクトのある中合であることよ。

同龍、11玉、

もちろん、これで終わりではない。
今度は攻方が好手を見せる番だ。

21龍、

同角は23桂の1手詰。

   同玉、11飛、同玉、

入手した飛車を遣って、23龍を原型消去した。

23桂、21玉、31桂成、同玉、32銀打まで15手詰

「完璧」と評したいが、これは本来人を賞賛する言葉。
こんなのはどうだろう。

「植田氏の璧」と名づけたいくらいの作品だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください