詰将棋入門(198) 盤面4枚の馬鋸

墨江酔人『将棋墨酔』第1番 近代将棋 1975.5

盤面わずか4枚。持駒も歩18枚。
これで本当に詰将棋になっているのという作品。
※一度紹介した図だけれど詰将棋入門ではまだ扱っていないはず

あまりにシンプルな図なので攻方の利きを確認しよう。

玉は21から43そして54と逃げ出せたら勝利。
つまり攻方は43に玉が到達されたら失敗と言うことだ。

王手はもっとあるが、初手は13歩と89馬しかないだろう。
まずは89馬から調べてみる。

89馬、

玉は先に書いたように21から43を目指す。

   21玉、22歩、31玉、32歩、42玉、

【失敗図】

これはもう玉の脱出を防げないことがわかるだろう。
89馬はまだ時期尚早なのだ。
42玉となったときに、99馬だったら33馬とすることが出来る。

そこで初手はもう一つの可能性しかないとわかる。

(初手より)13歩、21玉、

玉はやはり21玉と逃げるしかない。

22歩、

11-99ラインに馬を置いたまま22歩とすれば、これは取れない。
先程と同様に31玉と逃げるとどうなるか確認しておこう。

   31玉、

32歩、41玉、42歩、同玉、33馬、

31~42とすると33馬で簡単に捕まえることが出来る。
詰将棋としては32歩に同玉と取る方が手数がかかる。

(31玉から)32歩、同玉、33馬、41玉、

打歩詰で逃れるのが玉方の最後の手段だ。

51香成、31玉、21歩成、同玉、12歩成、

【変化図】

一旦41玉、51香成として打歩詰の局面に誘導されるが、歩2枚を成捨てればあとは23金で押し潰せることがわかるだろう。

そこで22歩には31玉と逃亡は出来ないとわかる。

   11玉、

玉は雪隠に潜り込むしかない。

12歩成、同玉、89馬、

ここでようやく89馬と僅かに馬を近づける。
初手に89馬としたときは21玉と逃げられたが、22歩の存在で21玉と出来ないことがポイントだ。

   11玉、22玉、88馬、

22玉は88馬で2手早くなる。
11玉と潜り込むので12歩、22玉と追い出して88馬だ。
ここで慌てて23馬としてしまうと、31玉、32歩、21玉で今度こそ打歩詰で逃れられてしまう。

もしこのとき31玉と左辺に逃げだそうとしても……

   31玉、32歩、同玉、33馬、

【変化図】

以下どう逃げても32歩とする1歩があれば詰むことがわかるだろう。

そこで正しい玉の逃げ方は

   12玉、

さてこの局面を眺めてみると、初形図と比べて持駒が歩3枚減った代わりに馬が99から88に近づいている。
これが1サイクルだ。

13歩、21玉、22歩、11玉、12歩成、同玉、
78馬、11玉、12歩、22玉、77馬、12玉、

13歩、21玉、22歩、11玉、12歩成、同玉、
67馬、11玉、12歩、22玉、66馬、12玉、

13歩、21玉、22歩、11玉、12歩成、同玉、
56馬、11玉、12歩、22玉、55馬、12玉、

13歩、21玉、22歩、11玉、12歩成、同玉、
45馬、11玉、12歩、22玉、44馬、12玉、

ここで持駒が歩3枚しか残っていない。
それを使って44馬を33馬にしたら今度こそ31玉と逃げられてしまう。

ここから収束だ。
歩を節約して攻める。

34馬、

この34馬が52にまで効いている点が今までと違う所だ。

   11玉、12歩、21玉、31玉、32歩、

玉は持駒を使い切らせてしまおうという方針で逃げる。
実際にこれで持駒はなくなった。

しかし41玉には52香成、32玉、33馬、31玉、42成香までと簡単。

   32玉、23金、

23金と12に効かせつつ王手するのが好手だ。
これが止めを刺す。

   41玉、

ここで次の一手–52にくるのが香でも馬でも良いというのが本作唯一の瑕疵だ。

52香成、31玉、21歩成、同玉、43馬、31玉、
32馬まで77手詰

本作を七條兼三は黒川一郎「天馬」の検討中に発見したという。
名作が名作を生むと言うことか。

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