詰将棋入門(216) 桂香図式の傑作

新田道雄 詰パラ 1975.5

前回に続いて桂香図式。
新田道雄氏は詰パラデパートの担当を長く務めつつ、多作で、解答でも活躍していた。

42金が守っているので、31から41への逃走が気になる。
では具体的に初手は?
33銀?23銀?13角?

でも、大抵の詰将棋ファンだったら、まず試してみたい手が見える。なぜと訊かれても困るのだが、まずはこの手に心惹かれてしまうのだ。

13歩成、

桂香図式の宿命で13に捨駒をすると変化が多い。
それで筆者など桂香図式が苦手なのだが、好きな人はそこが好きなんだろうな。
コツコツとつぶしていこう。(初手13歩成は正解だと確信している……)

まずは初見で気になった31玉は……。

   31玉、32銀、同金、同角成、22飛、

【変化図】

案外、簡単だった。31玉でも飛銀の持駒があれば心配ないということだ。

次は同玉の変化。

   同玉、14銀、

【変化図】

これも手をつけてみれば簡単だ。
24玉は25飛で止まるし、22玉には23角成で大丈夫。

次は同桂。

   同桂、14桂、31玉、21飛、

【変化図】

32銀からでも詰むがここは桂馬を動かした効果で21飛と鮮やかに捨ててみよう。

これで正解の応手は確定する。

   同香、

同香と決まるとこれは急に守備が薄くなったと感じる。
早速、試してみたい手が見えてきた。

12飛、

これはとれない。とったら勿論23銀から22角。
かつ31玉の逃げも許さない一手だ。
……ところが。

   33玉、42飛成、24玉、46角、15玉、

【失敗図】

42飛成も同玉とはとれない。31角で捕まっている。
しかし、上部へスタコラサッサと逃げる手があった。
46角に間駒してくれれば22龍が間に合うのだが、15玉で絶望だ。

これで本作のメインテーマが明らかになる。
どうやってこの上部脱出を阻止するかということだ。

ここで本当ならちょっと考えていただきたいところだが(昔は続きは明日とやった)、昨今は皆さん忙しい。
どんどん正解を説明してしまうよ。

14桂、

14歩を成捨てたい衝動があるのは、無意識にこの手を考えていたのかもしれない。
初形で14歩がなければ初手から14桂で簡単だ。

   同香、12飛、33玉、24銀、

24玉から上部に逃げようという王さんに、わざわざ24銀と捨てる!
いわゆる退路に捨駒の手筋なのだが、唯一のカナケでもあり衝撃の一手だ。

   同玉、46角、

この角がピッタリ。しかし持駒なしだが、これで上部脱出を阻止できているのだろうか。

   25玉、14角成、26玉、22飛成、17玉、
28龍まで

【変化図】

14桂で香を吊り上げ14角成を担保したことで、46角の限定打が鮮やかに決まるというわけだ。

さて作意は最短で収束する。

   33玉、42飛成、同玉、64角、41玉、
42金まで15手詰

詰上りは清涼詰。

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