※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。
第16番 不明
持駒は歩ばかり。これは打歩テーマの作品に違いない。
77香がいるから76金は捨てる展開になるのだろう。
15角は37角と捨てるのもありうるが、24龍を54に捨てて33角成と活用する感じだろうか。
56歩、同玉、57銀、55玉、
56玉に54龍としなかったのは、なんとなく46を埋めておきたかったから。
八段目に金銀2枚いるのでまずは銀を使って46を埋めるのかと推理した。
45金、同玉、46歩、同桂、
ここで変なことに気づいた。
「これ同銀で詰むんじゃね?」
同銀、同玉、57金、55玉、56歩、45玉、
37桂、同歩成、46歩、36玉、26龍まで
これは余詰だ。56歩のところ35龍でもよい。
こんな簡単な余詰をなぜと思うが、巨匠でもそういうものなのだ。検討を手伝ってくれる棋友などがいない場合、一人で検討するということは本当に難しい。
完成!即投稿はまず余詰。
暫く寝かせたりしてから検討する必要がある。
それでも簡単な筋を見落とす。
師匠の妻木貴雄さんは「完全検討をしなさい」と教えてくれた。
完全検討とはすべての王手とすべての応手を大きな紙に書き出して調べることだ。
柿木将棋に検討をお任せの若い人には想像もできない世界だろうなぁ。
さて作意を少しは探ってみようと思ったが、45金、同玉、46歩、同桂、56銀では45からの逃走路が空いてしまって全然詰まない。
45金が違うとなると……と考えていて、もう一つの余詰を見つけた。
初手から
65金、
よくみると、これで詰んでいる。
同玉に57桂。56玉と躱しても67銀で同じこと。
もうこれは作意を見つけるのは諦めて、正解を見ることにした。
56歩、同玉、57銀、55玉、
ここまでは正解だった。
次の手が妙手。
46銀、
35金は温存しなければいけないのだ。
68銀の役割は46を塞ぐことという読みは当っていたが、只捨てで上手くいくとは。
慥かに同玉では36金~26龍で詰むから同桂の一手だ。
同桂、56歩、同玉、54龍、同歩、
57歩、
これで予定通り33角成の筋に入ることができる。
途中、57金ではなく、57歩と重ねて打つのが好手。
55玉、33角成、44桂、
桂合!そうかこれは森田手筋がベースの作品だったのか。
角合は切って65金から83角。
56歩、同玉、34馬、同桂、57金、55玉、
森田手筋とは【取歩駒発生】+【アンピン】のこと。
44桂を合駒で発生しただけでは33馬でピンされているのでこの桂は動けない。
本作はその馬を捨て、44桂がアンピンされ動けるようになった。
これで56歩の打歩詰を打開したわけである。
56歩、同桂、66金上、同香、65金、同玉、
57桂、55玉、45金まで29手詰。
流石は高木秀次といえる見事な作意だ。
序盤の銀を捨てての穴塞ぎ。龍を捨てて33角成を狙うのはやや見え見えだが、57歩の重ね打ち。そして56歩を打った後の収束も完璧だ。
逆に作意が上手いから余詰も見えにくくなるんだよな。
修正図を考えてみようと他に余詰が無いか柿木将棋にかけたら……余詰がでるでる。
まるで蛙の解剖したら寄生虫がうじゃうじゃ現れるように余詰の嵐。
諦めた。
「千早城」で思い出すのは、詰将棋おもちゃ箱の中の解答者ゼロ作品。ビギナーズラック?かもではあったが普通に解決出来た覚えがある。その後はトライエブリデイー、詰将棋の欠欠片、貴HP、歴代の看寿賞作、解答者ゼロ作、将棋世界の付録。まあ~~様々だが、自分なりに沢山、、解いてきたもんだとつくづく思うが、ふと、、果たして「楽しい」言う感情なのかどうかだ。只今、柏川悦夫氏の「詰」を猛烈に解決中である。但し2回目。まあまあ11~21手近辺の短編作だ。
仮に苦痛度数?はレベル5として置こう。比較的に短時間で解くものだからどんどんと解くが、これは苦痛度数を積み上げている脳内の指図ではないだろうか。
解いても解いても作図しても作図しても「もともとは意味はない」のだ。難解作をやっとの想いで解決した時は脳は
セレトニンを出し、容易な作品についてはどんどんと作品を解く指図に従っている気がしてならない。こんな事は何も詰将棋に限ったことではなくて、佛教のテーラワーダ、禅宗では生きる意味も死ぬ意味も人間には無いと仰せられるが概して人間は苦痛を積み上げる為に生れてきただけかも。
おもしろいですね。
是非、2700字程度にまとめて「夏休みの自由研究2022」に投稿してください!