詰将棋入門(221) いつのまにやら桂馬発生

水上仁 近将1977.6

使用駒8枚、\(4\times4\)の可愛らしい初形。ここから意外な手筋が出現する。

「持駒たくさん」よりも「駒が足りなそう」の方が考える気がする。
本作も初手は持駒の飛車を打つよりなさそうだ。

かといって24飛では13玉で次の手がない。
ここは25飛と打つ一手だ。

25飛、

13玉には24馬と引く手をみている。
早くも間駒読みだ。
まずは……

   23歩、

これは揮発性っぽいので、一番安い歩から考えよう。

33歩成、11玉、

歩を成るしかない、21玉と落ちる手には、これは詰みそうだ。
32馬から23飛成で持駒角歩だから順に打てば良い。

では13玉と上部を開拓するのは……

33歩成、13玉、23と、同角、

これは25飛と打った狙い通り24馬と引いて押していけば良い。31玉でも53角と押さえられる。
すると23合は全部詰むということか。
いや、桂合で下がる順を確認していなかった。

   23桂、

これはちょっと考えるが次の順で詰む。

33歩成、21玉、32と、同銀、23飛成、

以下、同銀に桂、角と打って終了。
これで23合はすべて終了。
13玉と逃げるのはもちろん24馬で論外なので作意は24への中合とわかる。

例によって歩から考えていこう。

   24歩、

同飛は13玉で続かない。やはり33歩成だ。

33歩成、13玉、15飛、14合、31馬まで

これは読みを省略できる。
香合、桂合も同じ順で詰むからだ。
とすると順番では銀だが

   24銀、

銀はどう考えても強すぎる。

同飛、

これで23に何を合しても33馬で次に22銀と重ねれば詰むようだ。
13玉にはもちろん22銀まで。
この22銀ができないように金合だったら?

   24金、

同飛、13玉、22飛成、

これで次に33馬とすればあとは金の一手詰だ。
かくして最後に残ったのが作意だろう。

   24飛、

これも取るしかない。

同飛、

飛車は金銀のような粘着力がないから使いにくい局面なのだ。

   23合、33歩成、13玉、14飛打、

23の間駒が歩香桂ならこれで詰み。
銀金なら同☖、22飛成までだ。
……ということは?

   13玉、

飛車を中合で捨てて、玉は13へと上がるというギリギリの応手。
まさに薄氷を踏むが如きだ。

一方で攻方にしてみれば22飛成、同玉、25飛ではまた24飛合で千日手。
別の手を選ばなければならない。

15飛、

ボンヤリ15飛と打つのが千日手打開の妙手。
もちろん限定打だ。

   14香、

いかにも揮発性なので高い駒はダメ。
歩合は効かないので香合だと……

同飛、同角、同飛、同玉、

これは角香で捕らえられる形。

36角、13玉、14香、22玉、33歩成、21玉、
54角、

36角に25合は15香で三手詰。
21玉で逃げ切られたかに見えるが54角と再活用して数の攻めで勝利している。

   14桂、

そこで15飛には桂合の一手だ。これはバラしても詰まない。

22飛成、同玉、25飛、

さて、この局面にはなんだかデジャブを感じる。
初手25飛と打った局面とほぼ同じだ。
唯一異なるのが14桂の存在。

この14桂が置かれたお陰で、もう中合はできなくなっている。
24合なら33歩成、13玉、31馬で詰んでいるというわけだ。

14桂は決して守備駒ではなく玉の逃げ道を塞ぐ壁駒なのだ。
すなわちこれは壁駒発生の手筋である。

これで玉方は23合をせざるを得ない。
いずれも既に詰みを確認済である。

   23歩、

33歩成、21玉、32馬、

   同銀、23飛成、

   同銀、22歩、31玉、53角、
41玉、42角成まで21手詰。

守備駒が増えているのに逆に詰むという面白さ。
壁駒発生の手筋はもっと発展の可能性があるように思う。

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