長編詰将棋の世界(28) と金ブロックに挑む

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

山崎健 詰パラ2011.1

棋譜ファイル

17飛、同玉、
{38飛、X27玉、28飛、16玉、17歩、同玉}=
58飛、
{28飛、同角、イ27玉、37飛、18玉、39角}=
Y58と直、
、58飛、、58と引、
、58飛、、58と上、
、58飛、27玉、28飛、16玉、17歩、同玉、68飛、、68と引、
、68飛、、68と上、
、68飛、27玉、28飛、16玉、17歩、同玉、78飛、、78と引、
、78飛、、78と上、
、78飛、27玉、28飛、16玉、17歩、同玉、88飛、、88と引、
、88飛、、88と、
、88飛、88成香、
、88飛、28飛、同角、27玉、37飛、18玉、
A19角、88銀成、38飛、19玉、39飛、29角、
同飛、同玉、39金打、18玉、19香、同玉、
73角、18玉、28角成迄187手詰

X 16玉、17歩、27玉、28飛、17玉も可。非限定。
18玉、19角、同玉、29金、同玉、39飛まで
Y 58と引または58と右上も可。非限定。
88銀成、甲、88飛、28飛、同角、27玉、37飛、18玉、19角、88成香、38飛、19玉、28銀、29玉、39金、18玉、19金まで181手
A 39角、88銀成、38飛、27玉、28飛、16玉、18香、17歩、同香、同玉、88飛、28香、同角、27玉、38銀、28玉、37銀、17玉、28銀、18玉、27銀、29玉
29飛、同飛、同玉、39金打、18玉、28飛、17玉、18香まで185手

☆と金の巨大なブロックに驚かされる。そして手順を進めるとそのブロックがすべて融けて無くなってしまう。

☆そのカラクリは簡明だ。途中図で27玉の逃げに38金だと16玉で打歩詰。そこで98に落ちている成香の入手を目指す。

☆27玉の逃げなら28飛で同様に68~98と飛車を振っていく要領だ。

☆ところが玉方にも受けの妙手がある。28飛合だ。同角しかないが27玉37飛39角58とと飛車を抜かれる。しかし合駒で得た飛車を38飛と活用すれば、なんと先程と似た局面に戻るではないか。

☆図は51手目の局面。ここでも28飛合とし58とと取る事も可能だが、その次のサイクルは取る駒がないので27玉と逃げざるを得ない。すると飛車は68を飛ばして78とを剥がす事が出来る。つまり69とが取り残されるという事だ。玉方は68,78と各駅停車で進ませたいのである。したがってこの局面での正解は27玉と素直にかわす手だ。

☆以下は収束まで悩む所はない。最後香を渡すか銀を渡すかは玉方に選択権がある。これは変化ロを参照されたい。

☆目的の香を入手したら収束だ。今までの惰性で39角と開き王手をすると銀を入手する事が出来るが、玉方も香合が出来るので失敗する。この紛れAで誤解された方が2名でた。

☆正解は19角と金を入手する。ローテーションしながら活躍していた2枚の飛車とも盤上から姿を消して、遠角で収束するとは見事だ。

池田俊哉 双方協力してと金を消していく感触がユーモラス。収束がきれいにまとまっているのでさらに高評価
名越健将 と金が消えていくさまに息を呑む。最後の最後で結構考えた。
鈴木 彊 盤面に張り付いた「と金」13枚が次々と消えていくとは想像も出来ませんでした。最後に香を入手して73角から82角成で決めるとは見事なもので只々感心するばかりでした。

☆それまでの39角を19角と手を変える所が好印象。

国兼秀旗 分厚いと金の岩盤を掘削して奥にある香を手に入れる狙いであることはすぐにわかる。初形から収束が見えてしまうところは謎解きとしてちょっと物足りないが、趣向部分の楽しさはそれを補って余りある。次回作への期待も込めてAを贈ります。
須川卓二 フェアリー作品のような手触りです。どの順が最長かという悩ましい部分はあるものの楽しい作品でした。
竹中健一 詰んだとは思うが最長手数はこれ??意外にアッサリしていた…
増田智彬 簡単な仕掛けによる軽いはがし趣向となっていますが、少々もったいない。
斎藤博久 将来性のある素材を感じさせる素材。

☆増田さん他数名の方から改良案の提案も。作者に送付しておきます。

☆このタイプのと金ブロック剥がしは持駒変換と組合わせて長手数開発競争の主役であった事は古い読者なら良く覚えているはずだ。ただしそれらは皆角による剥がし。飛車によるものはあまり記憶にない。すぐに思い出せるのは変幻自在「蘊奥」162番ぐらいだ。

永島勝利 非限定箇所が多いのが若干気になるが、メカニズムは面白いので良しとしたい。

☆その理由はこの非限定の多さであろう。評価が今一つ伸び悩んだのも同じ原因だと思われる。

武田静山 それにしても新人でこの構想には驚かされる。
神谷薫 久々の本格的ハガシ趣向。構図感覚・収束のまとまりも素晴らしく、これで初入選とは大型新人の登場ですね。
小林理 これで本当に初入選ですか?すごい!単なるはがしに終わっていなくて、破調があったり、収束の意味を考えさせられたりして、頭を使わされた。

☆初入選ではあるがデビューは2007年。パラしかお読みでない方は2008年7月号の看寿賞選考経過をご覧頂きたい。インターネットのサイト「おもちゃ箱」で発表した長篇作品が3作も候補としてあげられている。昨年発表された「アンフィスバエナ」も長篇ファンなら要チェックの傑作だ。

☆その期待の長編作家、山崎健がようやっとパラにも登場してくれた。他にも投稿頂いているので乞ご期待!

「長編詰将棋の世界(28) と金ブロックに挑む」への1件のフィードバック

  1. 奇怪な図面に全軍の駒が躍動するのかと思って解いてみた。
    しかし小生にとっては生歩と銀・角の置き駒が如実に残る
    のは初めてで面くらったが新鮮(笑)でもあった。

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