高木秀次『千早城』に登る(24)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第24番 

今日はやさしそうに見える。そして実際に易しかったが……。

王手が限られているので易しそうだ。

61香成、同玉、71と、同玉、

さて次は角をどっちに成るかだが、53角成では81玉で92飛車が助からない。

93角成、

以下、馬で端まで玉を追い詰めていく。
と43馬、11玉で手が止まる。
99馬がいるので33馬とできない。

とすれば飛車で攻めるしかない。

91飛成、12玉、21龍、13玉、25桂、同と、
15飛、同と、

【失敗図】

できる王手はやってみたが、これは詰まない。
逆にこれで詰んでしまったら、作品集に載ることはないだろう。

4手目の局面まで戻して考える。

89飛と捨てることができないかと最初に考えたが、どうも無理なようだ。
79飛もチャンスはない。

すると次は95桂だ。
これでピンときた。
この桂を消去して馬を引く筋に違いない。
ここら辺は無双26番を知っているかどうかで難易度が違うだろう。

83桂不成、81玉、91桂成、71玉、93角成、61玉、
94馬

以下9筋を馬を引いて追っていく。

……21玉、98馬、

これは同馬と取れない。同馬なら22歩成の1手詰だから。
かといって11玉なら99馬と逆に取られる。
このようなときは捨合だ。

   87歩、

合駒のタイミングと位置と駒種はあとで考えよう。

同馬、11玉、

あれ?91桂成としたから、91飛成ができないよ???

しばし考えて……もしかしたら91桂成ではなく71桂成で詰むのではないかと思いついた。

92玉と飛車をとられるが、99飛と角を入手してなんとかなるのではないか。

これは作意の感触だ!

83玉なら……

65角と打ってこれは鍋に入っている。

82玉が難しそうだ。

71桂成、92玉、99飛、82玉、93飛成、

82玉には93飛成しか無さそう。

   71玉、53角成、

さて合駒だ。
まず歩合だと……

   62歩、73龍、81玉、72角、91玉、
93龍、92合、64馬まで

桂合でも一緒だな。
最後の64馬を消して62香合だと……

同様に進めて72角の所63角で良さそうだ。

これは同香ととれない。かわりに91玉ではなく92玉と逃げられるが

   92玉、74角成、81玉、64馬

これで何を合しても切って詰む。
省略するが飛金銀合は同馬として片付いた。

これで7手目71桂成には同玉だと確認できた。

さて以下93角成から追っていくと87歩、同馬をいれて次の図になる。

【失敗図】

……やはり詰まない。先程の失敗図より1歩入手できたが14歩、同玉、12龍、13合で手がない。
ただ桂合はここで25桂打があるので中合は歩だとわかった。

でも、もう一息だ。
19飛を活用する手はこれしかない。

15手目41玉の瞬間に

49飛、

同桂成とさせて同様に攻めていくと……

57桂が動いたので69馬で詰んでいる。

これは駒余りだから変化だ。
作意は35馬、同と、25金までであろう。

33手目を36馬に限定させるにはいつどこに捨合をすればいいのか……
これが最後の謎だ。

少し考えるとわかる。
22手目54歩だ。

22手目以外のタイミングで中合しても、その後に馬が動かせる。

この馬引の構想はいくつも作られているが、中合のタイミングや位置が非限定なものがほとんどだ。
それをキチンと限定させているのは流石高木秀次だといえよう。

これなら54馬の形で1筋に玉がはいるから33手目は36馬となる。
この収束はいまでは変長扱いされるが、昔は誰も問題にしなかった。

さて、これで終われば目出度し目出度しだった。

ずいぶん遠回りしたが、いわば紛れをすべて味わった作者の想定通りの解答者だから一番幸せな解き方をしたといえるだろう。

ところが、答合わせをしようと正解をみてみたら6手目は61玉と逃げている。
あれ?
81玉に71桂成が妙手なのではないのか?

ともう一度81玉の形を見直してみると81玉は91桂成、71玉、53角成で簡単に詰んでいるではないか。

……もっとも時間をかけた合駒調べはまったくの無駄だった……。
しかも35手詰の6手目で間違えている。
これが解答選手権だったら途中点も1点だけという悲しいことになっていたのだった。

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