上田吉一『極光21』第90番 詰パラ1982.4
昨夜は27手目77角の局面まで進めた。
今夜はこの続き。さて合駒は何?
86香、
飛金銀は簡単だから桂か香の二択。
しかしここはゴーストが「香だ」と囁く場面なのだ。
何?何も囁かない?
大丈夫、この「詰将棋入門」の連載を半年も読めばまず間違いなく囁くようになってくるから。
同馬、84玉、66角、74玉、64馬、85玉、
75馬、94玉、95歩、同玉、77角、
同じ局面にみえる?
「局面」は盤面と持駒の両方を含めた概念だ。
29手目の局面とよく比べてみれば10手で何が変化したのか解る。
このまま進めれば吉だ。
86香、同馬、84玉、66角、74玉、
64馬、85玉、75馬、94玉、95歩、同玉、
77角、
これではっきりした。
持駒が「香歩歩」→「香香歩」→「香香香」と変わり、そして盤面に93香がいるからもう玉方の持駒には香は残っていない。
次の展開–収束が待っているということだ。
86桂、
いよいよ桂が入手できる。
これで収束に入れるという仕組みだ。
でも何処から?
同馬、84玉、66角、74玉、64馬、85玉、
75馬、94玉、95香、同玉、77角、
長編作品ではメインの舞台から移動して収束ということも多い。
本作の素晴らしい所は収束までこの左端の狭い空間で完結している所だ。
さて、95香と捨てたので玉方は今度は香合ができる。
86香、
同馬では今度こそ同じ局面に還ってきてしまう。
手を変えるのはここしかない。
87桂、同金、96香、同玉、97香、同玉、
88金、
持駒をあっという間に使い果たしたが、序盤の変化でも活躍した89金がここに来てもう一度見得を切る。
96玉、87金、同香成、97金、同成香、
86馬まで77手詰
桂合で収束に入るということは、その選択権は玉方にある。
もっと早く桂合をすると96香が96歩に変わるだけだということを確認しておいて欲しい。
『極光21』のこの作品の解説が面白い。
引用させてもらおう。
詰将棋を作っているとき、最初は盤面に駒が沈んでいる。(中略)
しばらく作っていくと、少しずつ駒が盤面から離れていくことがある。(中略)
巧くいけば配置した全部の駒が浮き上がってくるように見える。
実はこのように見えたときが、創作を打ち切るチャンスなのである。(中略)
このように見えない場合は、まだ作り足りない。つまり何かが欠けている。打ち切り時を越えてさらに作っていってもふたたび駒たちは沈んでゆく。(中略)
本作は珍しく駒たちが浮き上がって見えた。多分これを会心作と言うのであろう。