謎のピアノ
卒業式の前日に卒業生だけで最後の練習をした後、学年主任のS先生が話をしていた。
合唱練習をした直後だったので、そのときピアノは舞台の中央に置いてあった。つまりS先生の真後ろだ。
舞台の上にはS先生が一人だけ。
生徒は皆静かにS先生の最後の話を聴いていた。
そのとき、突然「ポロン、ポロ~ン」とピアノの音が響いた。
誰が弾いたのか?誰も見えない。生徒達は一斉にざわついた。
「静かにしろ!」とS先生はすかざず一括。
それで今のピアノの音はなかったことになった。
亡霊もそれ以上何もしなかった。
後光の輝き
卒業式のなかで来賓が一人ずつ起立して挨拶をする場面がある。生徒達は座ったまま座ったまま来賓の方に向かう。
来賓の中に某格闘技ジムの会長なのだが、頭が綺麗にはげ上がっている方がいた。その方が立ち上がったとき、窓から入ってくる太陽光が絶妙な角度ではげ頭に当たった。すると太陽光ははげ頭で見事に反射し、生徒側から見るときれいに光り輝いた。
皆眩しいのを我慢していたが、誰かが「光っている……」と呟いてしまった。式の最中だから笑ってはいけない。そういう緊張が生徒の間に波のように広まった。
本当に光り輝いていた。菩薩の化生だったのかもしれない。生徒達は皆よく我慢しきった。
笑い出す担任達
卒業生の答辞の後、合唱をするのだが、みなぐしゃぐしゃに泣きながら頑張って歌っていた。
それを見て一番端に座っていた六組の担任がこともあろうに笑い出した。一生懸命歌っているのに笑うなんてなんてヤツだ。ところが、笑いという物は伝染する物で五組の担任もつられて笑い出した。笑ってはいけないと思いつつも、一度堰を切ってしまうともう笑いをとどめることはできなくなる。やがて四組の担任も笑い出した。
これでは生徒が頑張っているのにそれを笑うとんでもない担任達ということになってしまう。しかし、そのとき合唱はやけに長く3曲も歌うことになっていた。そしてとうとう三組の担任も笑い出してしまった。
そのとき二組の担任だったカミサンは「早く歌い終わってくれ!」と強く願ったそうだ。このままでは私まで笑い出してしまう。そして長い時間が過ぎ……無事笑わずに終わることができたということだった。
ということでカミサンの卒業式の思い出ベスト3を書いてみた。
オイラ自身は卒業式当日は放送室で演出担当しているか、外で警備をしていたのであまり思い出はない。担当学年のときはもちろん式に出席したけど、きちんと黙って座っているのは苦手なので辛い思い出しかないなぁ。