詰将棋入門(240) 久留島喜内[4] 斜め朝霧趣向

三代伊藤宗看・伊藤看寿の『将棋無双』『将棋図巧』は門脇版『詰むや詰まざるや』のお陰で全貌を知ることができる。同じ時代の久留島喜内の作品は『将棋妙案』『橘仙貼璧』という作品集の名前は知っていてもその内容はなかなか知ることができなかった。
マイナビの『図式全集 将棋妙案 橘仙貼壁』の発行は非常にありがたい。

久留島喜内『将棋妙案』第17番

序盤は読み切れないが、これしかないだろうという手順。
そこを過ぎると楽しい趣向手順が始まる。

73馬では71玉で83桂と打っても同桂とされて手詰まり。
となると精算がなくても53飛成と行くしかない。

53飛成、同玉、45桂、44玉、55銀、45玉、

53飛成に51玉と逃げられると困るようだが、2枚馬を間駒と替えてこれは詰む。
変化は割愛するが動く将棋盤には入れてあるので熱心家は確認されたし。
53同玉となれば、手は限られているので、上の進行意外はなかなか思いつかないだろう。

56金、同玉、47金、65玉、

まずは66金を捨てて38金の活用を図る。

66銀、同玉、57金上、65玉、56金右、74玉、

次に55銀を捨てて68金を活用させてくる。

75馬、同玉、66金上、74玉、65金右、83玉、

お次は86馬をすてる。
2枚の金がスクラムを組んで追い縋ってくる。

84銀、同玉、75金上、83玉、74金右、92玉、

続いて95銀も捨てられ2枚金はより斜めに進んでくる。

93香成、同玉、84金上、92玉、

そろそろ終盤だ。ここ83金とできたら簡単な詰みだが、91桂が守っている。

91馬、同玉、83桂、81玉、82歩、同玉、

そこで最後の大物37馬をここでズバッと切ることになる。

73金直、81玉、82歩、92玉、91桂成、同玉、
92歩、同玉、

入手した桂と歩を捌いていよいよ終局間近。

83金上、91玉、81歩成、同玉、82金右まで51手詰

なんと攻方の駒は綺麗さっぱり一掃されて、2枚金のみ。
もともと38と68でボンヤリしていた金だ。
初形からこの2枚が2枚だけになって玉を仕留めることになるとは誰が想像しただろう。
昭和になって、このように「終局図で攻方駒2枚になる」詰将棋を岡田敏は清涼詰と名づけた。(細かい経緯は省略)

ピッタリ詰んだ感が最高である。

なお朝霧趣向とは「図巧」第6番の「朝霧」から名づけられた趣向名だ。
その「朝霧」は2枚のと金で横に玉を追い詰めていく趣向。(次のエントリーを参考にしてください。詰将棋入門(70) 朝霧
本作は斜めに追い詰めていくのだが、これも朝霧趣向と呼ばれている。

こちらもどうぞ。
詰将棋雑談(51) 朝霧趣向の元祖

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