詰棋書紹介(3) 名作詰将棋

二上達也九段・福田稔 「名作詰将棋」

 有紀書房 1986

一般に流通する詰将棋の本は、おそらく販売数を増やすための方策なのだろうプロ棋士の名前を前面に打ち出す場合が多い。
この本は、共著としているだけかなり良心的だ。
さらに二上九段の人柄を表わす文章が冒頭にある。

普通、詰将棋の本といえば、技術的な面だけをとらえたものばかりです。
本書は、詰将棋というものを歴史的に見るだけでなく、質的移り変わりにも考察を下しているのです。
例えば、初代大橋宗桂の素朴な味から宗看、看寿の技能の極地、そして喜内、君仲の趣向へと変わり、現在に至る精妙なはなまで一目で伝えています。
(中略)
以上は、一にも二にも福田氏の努力のたまものであって、本書は正しく福田氏の労作であり、大いに経緯を表する次第であります。本書は共著の形を取っていますが、私はほんの一部アドバイスをしたにすぎません。はたして本書の価値へ一助となりえたかどうか心許なく感じているのです。
いずれにしても、本書の内容は、詰将棋入門書として今までの最高峰であることを確信している次第です。
(中略)
  九段 二上達也

実は本書を初めて読んだときは、古図式ばっかりでなんだか冴えない本だなという印象でした。
周りの人たちのこの本への評価がやけに高いのが不思議でした。

今、詰将棋入門という連載を書いていますが、このテーマの本には次のものがあります。

  • 「名作詰将棋」    福田稔
  • 「詰将棋教室」    村山隆治
  • 「詰将棋を楽しむ本」 村山隆治
  • 「詰将棋探検隊」   角建逸
  • 「詰将棋手筋教室」  村山隆治
  • 「詰将棋入門」    石川和彦

どの路線でいくかと考えたとき、選んだのはこの「名作詰将棋」でした。

その良さは二上九段が書いてくれています。
この本には膨大な古図式のエッセンスが凝縮されているのです。

つみき書店でも1冊は販売用の古書として、1冊は貸本として提供しています。

さて、この本の中から1局紹介しましょう。

小林棋好手記詰物 第30番 明治初年頃

ちょっと将棋わかってきた頃に出題されて、自信満々に
「41飛成以下の7手ですね!」
と答えたら、2手目に31歩合という玄妙な応手を教わって将棋の奥の深さをのぞき込んだような気持ちになった記憶がありませんか。

7手目の局面を見ると、44飛がいつの間にか持駒になったような感じです。
小林棋好さん、記録にとっておいてくれて本当にありがとう。


追記(2020.8.24)
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