現代詰将棋中編名作選 中編名作選制作委員会
角ブックス 2018.7.15
「中編名作選」という本は間違えやすい。
ちょっと整理しておく。
左が「古今中編詰将棋名作選」、右が「現代詰将棋中編名作選」だ。
「古今中編詰将棋名作選」には江戸時代から昭和51年(1976)までの17手~29手の選ばれた傑作200局が集められている。
「現代詰将棋中編名作選」には昭和52年(1977)から平成28年(2016)までの19手~29手の選ばれた傑作が300局集められている。
そして31手以上の「古今中編詰将棋名作選第2集」という本がある。(筆者は所持していない)
そして31手~39手の「古今中編詰将棋名作選(第2集)」(100局)が詰パラ1978.8誌上に公開された。
今秋に角ブックスから出る新刊は、この第2集の後継にあたる「現代詰将棋中編名作選Ⅱ」なのだ。手数は31手~49手。
中編の手数が17手~39手だったり、19手~49手だったり、時代によって変わるが、どちらにしても範囲が広すぎるということで2つに分けているのでこんがらがりやすい。
さて、名作・傑作といっても人の好みは様々だ。
そこで、本書は30名が10作ずつ選んで、選んだ作品を解説するという造り方をしている。
したがって選者ごとに選ぶ作品の傾向も異なる。
どなたにも心に残る名作を見つけることができるだろう。
さて、1作選んで紹介するスタイルできたこのシリーズだが、今回はやめようかとも思った。
とても1作に絞れないからだ。
でも、楽しみにしてくださっている方もいると思うので、強引に1作選んだ。
角建逸 現代詰将棋中編名作選 第51番 近代将棋 1984.5
この作品を紹介したのはもちろんこの作品が大好きだからだが、決め手は解説の金子義隆さんの文章が気に入ったからだ。
作者はその後改作しているが、私はこの図が好みである。
つまりこの図は近い将来出版されるであろう角建逸作品集には載らないのだ。
載るのは当然ながら、作者による改作図である。
作図経験を積んだり、歳をとったりして作者の好みが変わってくることはよくある。
そこで過去の作品を改作し、古い作品はもうこの世から消えてなくなってほしいと願う(かもしれない)。
この作品のことではないが、よくあるのが発表図は「解答者から高評価を得よう」と紛れも豊富で変化も山盛りに欲張った図なのを、後に解脱してスマートに作り直すパターンだ。
しかし、過去の煩悩にまみれた熱い作品を、改作された落ち着いた作品より好きだと選ぶ解答者だっているかもしれないのだ。
一度発表した図を、忘れてくれ消し去ってくれ引用しないでくれという権利は作者にもないのではないだろうか。
しかし大概は作者の意向を尊重するものだ。
だってそもそもその作者の作品が好きなんだからね。
お互い様だし。
そこを敢えて改作前の図を選んだ金子義隆氏の詰将棋愛に感動を覚えるのだ。
つみき書店で購入できます(^^)。
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「古今中編詰将棋名作選Ⅱ」(31手~39手、100局)は
通巻270号(昭和53年8月号)だと思うのですが、
単行本も出たのでしたっけ?
風さんもきっと持っていますよ。
単行本にはなっていなかったのですか。
そうなんだ。
あの頃は貧乏だったので短篇名作選も単行本は我慢して買いませんでした。あとで補遺50局もあったのにと後悔しきり。
中編名作選第2集も単行本になったけど、金がなくて買えなかったんだと思い込んでいました。
ご教授感謝します!
はっ、すると1976年以前の41手~49手の傑作は放置されたままということですかね。
風みどりさんのこちらの発言をきっかけとして、「有名な詰将棋作品 4」https://sites.google.com/site/2hyakka/shogi/yumei4 を書くことができました。どうもありがとうございました。
楽しく読ませていただきました。
余詰・不詰が多いのが仕方ないこととはいえ残念ですね。
貴重な資料です。ありがとうございます。
この第51番の22手目は75王と逃げるのではなく
74王、次に64銀成、75王、65銀成の25手詰めと
するのがより美しい。
この作品は初形と24手目の局面の対比が狙いなので、同意しかねますが、もちろん感じ方は人それぞれです。
コメント返信有難うございます。
初型から94歩を削除した図面を24手目に持ってきているな~~とは小生も気付いていたが、、それを<狙い>としていたとまでは思わなかった。しかし、ご指摘を受ければ100%同意したい。しかし、、或いは、しかも22手目を74王と逃げれば96飛、86飛と2枚が初型の正座した形で王はスイートスポットで最後を迎える。結局、この作品は22手目を2通りの逃れ方をしても美しい味わいを残す2重に美しい作品だ。