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つみき書店の店長です。

詰将棋は忘れられていく

詰将棋入門(14)の萩野真甫作について門脇芳雄は「続詰むや詰まざるや」で次のように書いている。

萩野真甫は当時(江戸初期)屈指の強豪で、初代宗看に争将棋を挑んだことで知られる。彼の作品は、本局1題だけが『象戯綱目』に載せられて伝わっているのであるが、これが非常な名作で、もっと他の作品が伝わっていないのが惜しまれる。

そうなのだ。
江戸時代以降、おそらくかなりの数の詰将棋が作られ、そして消えていった。
この作品は赤縣敦菴が『象戯綱目』という本を編み、そこに収録されたので消え去らずに残った。

つみき書店は、この赤縣敦菴になりたいのだ。
『詰将棋精選』の高濱禎といってもよい。

よい詰将棋を、後世に残したい。
それがつみき書店の目指すことの一つ目である。

詰将棋入門(17) 「待宵」特集

前回、初心者の頃に必ず講師の先生に出題される3手詰を取り上げた。
初心者によく出題される詰将棋の出典は渡瀬莊治郎の「待宵」であることが多い。

今回は「待宵」から一挙8題紹介する。
いずれも初心者向きの短手数作品なので、紹介ではなく出題形式でだそう。ヒントとして手数を添える。

解答は最後に。

渡瀬莊治郎 待宵 第1番 1866

7手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第2番 1866

5手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第4番 1866

7手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第5番 1866

7手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第8番 1866

5手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第19番 1866

7手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第29番 1866

13手詰

渡瀬莊治郎 待宵 第31番 1866

9手詰
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詰将棋入門(16) 例の3手詰

作者不詳 懐中象戯早伝授 第26番 17??

最も有名な3手詰の原型は福田稔「名作詰将棋」によるとこの図であるそうだ。

筆者が初めて見せられた図は下図だったように記憶している。

16角を34馬にした図も見たことがある。

この図に関して野口益雄は「詰将棋ざつだん」の中で次のように述べている。

この作品について,詰パラ誌(?)にのっていたあるかたの文で“16角のかわりに34馬を置いてある図をよく見かけるが,なるほどその方が紛れも多くて解き難いようにみえる。しかし現実は,16角の図の方が,ずっと難しいのだ”というのを読み(捜してもその文が見当たらない。どなたが書かれたのでしょう?),ハッと目が開かれた気がしました。

なるほどそうだなぁと筆者も感心した。遠くから角が飛んでくるところがイイのだ。さらに言えば,成るところが良いのだ。

福田稔「名作詰将棋」には

この作品は、江戸中期、柳川屋庄兵衛刊、『懐中象戯早伝授』第二十六番に収められている、作者不明の古作物です。

とあるので17??と書いたが、どうも刊行年は記載されていないらしい。
磯田さんによると

『懐中象戯 早傳授』・・・編者も刊行年もはっきりしない折り本である。
孤本あれこれ(via.詰将棋一番星)

編者も不明と書いてある。では柳川屋庄兵衛といううなぎ屋さんのような方のお名前はどこから?

これについても詳しい方ご教授ください。


2020.4.15追記
岡本正貴さんより詰パラ2006.2 に森美憲『「名作3手詰」に関する多角的考察』という論考があることをご教授いただきました。ありがとうございます。
本文を書きなおしました。

詰将棋入門(15) 最古の詰将棋

初代大橋宗桂 象戯図式 第1番 1602

前回,かなり古い作品を紹介した。
それでは,最古の詰将棋はどういうものなのだろうか。

一世名人である初代大橋宗桂(異論あり)が天皇に献上した50番本が最古の詰将棋であるというのが通説になっている。

本作はその第1番なので,日本最古の詰将棋といえる。

実戦形でもあり易しい15手詰なので,初見の方は是非挑戦をされたし。
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詰将棋解答選手権オンラインに挑戦

今年も松戸会場のお手伝いの予定でしたが、コロナ禍で中止。
でもスタッフの方々の尽力でオンライン会場で開催とはありがたや。
例年なら採点ルームで一人寂しく解くところを、PCの前で一人寂しく解く……例年とおんなじか。

初級戦

99位とはキリのいい順位がとれました。いいことあるかな。
(6)に少し悩みました(31銀の配置が巧妙!)が、あとはスイスイ解けたのでまずまずの成績です。
(2)の作者が青木さんというのが一番の衝撃でした。青木さんもスタッフに入ったのですね。ご苦労様です。

一般戦

ここからは感想書くので、ネタバレ注意です。
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詰将棋入門(14) 小駒図式

萩野真甫 象戯綱目 第5巻第21番 1708

門脇芳雄「続詰むや詰まざるや」によると、作者の萩野真甫は初代宗看に争将棋を挑んだことで知られるというから、かなり古い時代の詰将棋だ。

しかし現代でも新作として通じるだけの内容と品格を持っている。

盤面も持駒も大駒の見当たらない小駒図式である。

銀桂香も指し始めの位置に並んでいる実戦形でもある。

さざ波のように美しい駒さばきを味わってもらいたい。
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詰将棋入門(13) 死刑の宣告

赤池嘉吉 「死刑の宣告」 将棋解頤 第44番 1838

有名な「死刑の宣告」という作品である。
作者は福田稔「名作詰将棋」によって赤池嘉吉としたが,「作者不詳」とする方も多い。(門脇芳雄「続詰むや詰まざるや」など)

35手詰。

本作は決して難しい作品ではないが,このあたりの手数の作品が一番解きがたいというのは事実である。

そこで,本日は詳しく手順を解説する。

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