詰将棋雑談(70) 攻方同一歩の連続不成

詰将棋入門(117)で三代伊藤宗看の攻方の1枚の歩が連続で不成と進める作品を紹介した。
この狙いを実現した作品を紹介しよう。

長谷繁蔵 詰パラ1963.1

飛車・角と連続で開き王手することで歩を2回連続で進めるという構想。
角の王手から始めて合駒をさせるところが巧い。

山中龍雄 将棋世界1965.10

こちらは逆順にして角・飛の開き王手をする。
これも作者は飛車の王手から始めたかっただろう。

橋本守正 詰パラ1969.12

飛車を取らせることで角の開き王手が可能になるという仕組みで駒取りを避けた。
最短の7手詰で実現したのが作者の主張であろう。

長谷繁蔵 詰パラ1975.4

飛車・飛車の開き王手で実現。
合駒に金が売切れなのがミソ。

小島茂 詰パラ1980.4

角・角の開き王手で実現。
三代宗看と同じだが、逆方向。
飛不成と組合わせたのが秀逸。
収束も決まって完璧の仕上がり。

原田清実 詰パラ1982.11

長谷繁蔵作とほぼ同一手順だが、持駒制限せずに金合を出現させているのが流石。
41角がなるほどの配置。

田原宏 詰パラ1986.8

橋本守正作を対称移動して後半を引き延ばしたような作品。
それは玉方の歩の2回不成を入れたかったため。
こちらも連続だったら凄かった。

さてオマケで雑談のまた雑談。

このエントリーは『将棋無双』第49番にからむ話題なのだが、門脇本の解説に次のような一節がある。

数年前、詰将棋界で「1枚の歩を連続した2手で不成、不成と捌く作品は。理論的に可能かどうか」というテーマが議論されたことがあるが、後で判ってみれば、200年も前にこの作品が創作されていたのである。

谷川本にも同じような記述がある。

昭和40年代、詰将棋作家の間で「歩の2回連続不成」の作品は可能かという議論が行われ、不可能と主張した人もいるようです。しかし、実際は200年以上も前に存在していました。

門脇本の初版がでたのが昭和50年(1975年)だから、二人のいっている「議論」は同じ事実について語っているのだろう。
しかし、ご覧のように詰パラで長谷繁蔵氏が1963年にすでに発表しているのだから、おかしな話だ。
手元にあるバックナンバーをざっと眺めても、それらしい「議論」は見つけられなかった。

やっと見つけた
のは詰パラ1962年7月号の読者サロンの次の投稿。

歩不成について
              酒井克彦

 最近、歩の不成について、一寸考えてみた。むろん詰棋の場合である。
 一局の詰棋において、玉方の同一歩の歩不成は二回しか出来ない。詰方も同様である。又連続不成も玉方は明らかに二回できる。しかし小生は攻方の連続歩不成に考えてしまった。(詰棋の場合だから歩不成によって王手が掛からねばならぬ。)攻方の連続歩不成は果たして出来るだろうかと。
 皆さん、すぐ答が出せますか。()バカな質問は寄せ、わかり切ってるじゃないか。–詰パラ猛者連)
 10分間も考えたであろうか。ニヤッと笑った。なンだ馬鹿げた話だ。その歩自体が王手をしなくても、飛車や角行のアキ王手ができるではないか。
 (歩不成自体の王手の連続は不可能と思う)
 しかし小生、攻方の同一歩連続不成の作品を見たことがない。誰か知っていたら教えてもらいたいし、過去一局もなかったら有志は一度手掛けては?
 「攻方同一歩連続不成」について小生が得た結論を述べると
①第一着手を歩自身による王手で次に飛又は角のアキ王手による歩不成は可能と思う。
②第一着手が飛又は角のアキ王手で次に歩自身の不成王手は不可能。
③第一着手の歩不成と次の歩不成が飛と飛、飛と角、角と角のアキ王手によるものは可能と思う。
④歩自体の王手の連続不成は不可能。

「数年前」と思っていたら実は12年も前だったということは、日常的に良くあること(?)なので、門脇氏はこの投稿を思い出して書いたのではなかろうか。

ただし、「議論された」といえるような反応はなかった。そもそも酒井氏の文章だからすでに結論が出ている。
①のカテゴリーの作品はまだ見たことがない。1号局の栄冠は誰の手に!?

長谷繁蔵氏は「私のベスト10」でこの文章をきっかけに1963.1の作品を創作したと書いている。
そういえば創棋会通信によると長谷繁蔵氏がご逝去なさったとのこと。
飛角図式の名作などが思い浮かびます。
ご冥福をお祈りいたします。

「詰将棋雑談(70) 攻方同一歩の連続不成」への2件のフィードバック

  1. 確かに①のカテゴリー作品。
    しかし『からくり箱』にも勿論収録されていませんし、T-Baseでもヒットしませんね。
    7手目12歩の余詰で発表を断念された?
    tweetには発表先のデータもないし。

    金子さん、読んでいたら真相を教えてください。

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