里見義周 闘魚 第49番 将棋月報 1973.4
里見義周といえば駒の一般機能表というのが筆者の印象だった。この表はじっくり読むと、なかなか創作の役に立つ。
つまり学究派の理論家というイメージだった。
ところが作品を並べてみると、実に易しく楽しい作品を作られる方で、イメージとのギャップに驚いた。
選んだのは龍追い。看寿の「寿」のような超大作ではない。
盤に並べて龍で王様を追いかけてみると…多分詰みまでいくはずだ。
ただし、何手で詰んだかが問題。
逃げ方を間違えると早く詰んでしまう。
105手になったら、正解だ。
91飛を活用するしかないのは見えている。
23銀右成、14玉、24成銀、15玉、11飛成、24玉、22龍、35玉、26龍、
ここが最初の分岐。
45玉とぐずるか、34玉と逃げ出すか。
34玉、35歩、33玉、23龍、42玉、43龍、51玉、41龍、62玉、61龍、73玉、63龍、84玉、83龍、75玉、86龍、
34玉が正解。その心は桂馬を左辺で使わせないためだ。
つまり左辺で折り返してきた後62玉に74桂と戻れないように封鎖すると、右辺に戻ってきたときに26龍、34玉、35歩、45玉とされて打歩詰で逃れる。
桂馬を使えるのは46歩と打って、45を封鎖した後なのだ。
さて、その左辺での分岐。
65玉か、74玉か。
もうおわかりだろう。
74玉、75歩、73玉、83龍、62玉、63龍、51玉、61龍、42玉、41龍、33玉、43龍、24玉、23龍、35玉、26龍、
鏡のように同じ理由で、65玉、66歩と65を封鎖できたら、右辺で折り返した後、42玉に34桂で右辺を封鎖できるのだ。
さて、また右辺で分岐。
今度は?先程と事情が異なるのは43歩(守)が消えていることだが。
45玉、46歩、34玉、35歩、33玉、
今度は45玉とぐずるのが正解。
その心は43が開いたので、46歩を打たせないと23龍、42玉に43歩と打たれて右辺を封鎖されてしまうから。
23龍、42玉、43龍、51玉、41龍、62玉、61龍、73玉、63龍、84玉、83龍、75玉、86龍、
され、もうおわかりだろう。
ただ、どの駒で折り返すか早まらないように。
65玉、77桂、74玉、75歩、73玉、
77桂と桂馬を使わなければいけない。
これは財布の事情だ。
本当だったら66歩~75歩~74桂と左辺を封鎖してしまいたい。
ところが、それでは持駒が尽きてしまう。
右辺で折り返してこれないのだ……。
右辺での折り返しに1歩残しておかなければならないので、なくなく桂馬を使わざるを得ないというわけ。
83龍、62玉、63龍、51玉、61龍、42玉、41龍、33玉、43龍、24玉、23龍、35玉、26龍、34玉、35歩、
これで持駒は使い切った。
もう折り返せないから、77桂を活用して収束に持って行かなければならない。
33玉、23龍、42玉、43龍、51玉、41龍、62玉、61龍、73玉、63龍、84玉、
さぁ、いよいよ最終盤だ。
いままでと同じ83龍では75玉、86龍、74玉で手がない。
ここで、手を変えるしかない。
74龍、95玉、94龍、
77桂の85への利きを頼りに、龍を切る。
あとは平易な収束だ。
同歩、85金、96玉、86金、97玉、88金、同玉、98飛、77玉、68金、66玉、67香 まで105手詰
どうです。
はじめて100手以上の詰将棋を解けたという方もいらっしゃるのではなかろうか。
せっかくなので、もう1題、同じ作者の龍追い作品を。
ユニークな軌跡の回転追いで楽しめるはず。
このような作品がもっともっとあっても良いと思う。
里見義周 闘魚 第50番 将棋月報 1964.11
里見義周に興味をもったならば次の情報にアクセスしてみると良いだろう。
- 里見義周「将棋朗作選」1939.3
- 里見義周「闘魚」1964.11
- 詰棋めいと第26号「里見義周特集」1999.7.1