野口益雄 貧乏図式 第16番 1971.5.10
野口益雄 貧乏図式 第20番 将棋世界 1949.3
2題ともやさしい9手詰。入門講座にふさわしい選題と自負している。
パラッとした配置で手に迷うが平凡に角を成って狭くするのが正解。
32角成、12玉、
この局面で13桂が邪魔駒になっている。
これを消去するのに「まずは24桂を考えるでしょう」という作者の声が聞こえてくる。
「はい、考えました」
21角、13玉、12角成、同玉、16飛、13歩、24桂まで9手詰
桂を残して角を捨てるのが狙い。
「31飛を捨てたくなるでしょう」と作者の声が聞こえてくるのは幻聴か?
33飛成、同桂、31角、23玉、12角、
ところが、これは取ってくれず、32玉で42角成は44飛が!
「はいはい。作者の狙い通りこの紛れに入りましたよ。しっかり」
作意は
22角、23玉、33角成、同桂、
失敗図との対比が面白い。
12角、同玉、32飛成、13玉、22龍まで9手詰
そのころから私は詰将棋を作るにあたって「軽み」をめざした。軽快の二字をモットーとした。重みも詰将棋の魅力の一つだが、私の性格に合わない。
金銀は重く、粘性の駒である。軽く、淡泊な詰将棋を作るには向かない。で、私は金銀を使わないシリーズを作ってみようと思い、将棋世界に貧乏図式と名付けた連作を投稿し続けた。
上の作品は発表年月が1971年となっているが、これは単行本「貧乏図式」の発行日だ。作られたのは恐らく下の図と同じ時期だと思われる。
野口益雄は近代将棋、王将、将棋春秋、将棋世界の編集に携わり、その後野口文庫の製作で詰将棋界への貢献は計り知れない人物だ。
自分の作りたい詰将棋を作り続ける姿勢は学びたい。
作者は「軽み」という。
確かに難解で苦しまされる作品は少ないが、野口作品からは解説に書いたような作者の声が聞こえてくるような気がする。
「この手を考えてもらえれば俺の勝ち~」
いや、野口益雄と面識は無いのだが……。
また売り出すのに貧乏図式ばっかり(そう明記して)投稿したというのは筆者も真似をした。
筆者はとにかく7手詰ばっかりを投稿した。
まずは名前を覚えてもらうのが大事だからね。
選んだ2作には使われていないが貧乏図式にはと金を使ってもかまわない。
この貧乏図式は一般名詞として使われるようになったが、「と金」を使っているのに貧乏はおかしいというクレームでもあったのだろうか。
今はと金(もちろん成銀、成桂、成香も)も使っていない金銀不使用図式は清貧図式とよばれている。
(成駒だらけの赤貧図式というのはどうだろう)
野口益雄に興味を持った形は次の情報にアクセスしてみるとよいだろう。
- 貧乏図式
- 石火図式
- 図式青竜篇
- 詰棋評論(上),(下)
- 千里図式
- 練習局初級詰将棋62
- 練習局中級詰将棋62
- 練習局実戦型詰将棋62
- 練習局詰将棋縄文篇62
- 図式無極篇
- 詰将棋ざつだん
- 図式獲麟篇
- 軽快詰将棋307