詰棋書紹介(51) 春霞

春霞 森田正司 全詰連 1971.10.1

あらためて手に取ると,その薄さに驚く。
作品55局,わずか74頁。
しかし,印象はそうではない。
詰棋書の歴史に燦然と輝く存在感の強烈な作品集だ。

森田正司は「美」という言葉をよく使う。
序文から引用しよう。

「新手筋」の開発もさりながら,詰手順の構成美・律動美,駒の機能美・躍動美,配置の簡潔美・自然美・象形美……これら永遠の命をもつ「詰将棋の美」を探求することは至上の喜びである。

下は『近代将棋図式精選』にいただいたサインだ。

吉田健,山田修司,門脇芳雄,大道棋人と文章が書ける最強のメンバーで解説をつけているのだが,作者も必ず一言付け加えている。

七手詰,機能美,実戦型,入玉図,謎解き,打歩詰,中合,変則合,曲詰,趣向,双玉という11のジャンルに各5局という凝った構成を取っている。
巻末に小論文や小西逸生氏の随想,グループによる祝賀曲詰の連作なども掲載しており,実に中身が濃いのだ。

『春霞2』の話もあったのについに出なかった。
おそらく『詰棋めいと』の発行やほかの人の作品集の編集に力を注ぎ,自作集のことは後回しにしていたのだろう。

田宮さんの詰朗会には足しげく通ったが,森田さんの詰将棋研究会はエリートの集まりという印象で敷居が高かった。
思えば,もと色々教えてもらえばよかった。

国分寺公民館を借りるのに「将棋のサークル」と届けてあるので市民文化祭に将棋大会などの開催協力をする必要があった。しかし小学生のガキンチョの対応には手を焼いたようで,オイラに手伝ってくれと声がかかった。
森田さんの力になれたのは,それくらいしかないなぁ。

吉田健氏の解説に次のような一節があった。

–ことのついでに,森田氏はいわゆる”変同”を余り気にしない作家である。

そうか、オイラが変同をなんとも思わないのは、森田さんの影響だったのか。(権威の悪用)

森田正司 『春霞』第21番 詰パラ 1963.8

15手で一塊。
完結している。
無駄な手が一切ない。
駒の働きも完璧。

29とを置かなくてはならなかったときの森田正司の心情は如何なるものであったか察するに余りある。

名作とはこのような作品につかう言葉である。(今風だと神作?)

「詰棋書紹介(51) 春霞」への1件のフィードバック

  1. 森田さんの第二作品集は『秋霜』という題名まで決めておられたが、実現せず。
    『春霞』以降発表数が減っていったのは、ご自身のハードルが高くなり過ぎたせいではないかと思う。

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