『詰将棋の考え方』、『詰将棋教室』、『詰将棋を楽しむ本』と詰将棋の啓蒙書を書いてきた著者の集大成。
本書は「詰将棋を解けるようになるために手筋を知る」というラインで作られている。
A5版2段組で300頁を超すのだから大著といってよい。
『詰将棋教室』は熟読した世代であるので(『詰将棋を楽しむ本』は友人に貸したまま行方不明になってしまったので内容は忘れてしまった)、完成したときは期待に打ち震えて読んだのだが、期待が大きすぎたのか非常にガッカリした記憶がある。
一つは分量が多かった所為もあるのだろうが、上製本で3800円と高価だったこと。
自費出版で少部数を出すのならばこの価格も仕方がないが、天下のマイコミで出すのにこの価格では意味がないだろうと当時は思った。(今はマイナビの方針はマイコミ時代から変わっていないんだなと諦観している)
二つ目は近将に連載した「二歩禁の詰将棋」といった研究論考が載ると期待していたのに影も形もなかったこと。
三つ目は大量の引用や例題があるのだが、その例題が有名作の換骨奪胎(これは誤用らしい)で、かつ原作の作者名などは記載されておらず、読者は村山の創作であろうと誤解する形になっていたことだ。
例を挙げよう。
上図はp123の【第4図】だ。「一間龍の形」の節で「一間飛車で迫っていく原理図」と説明がある。
諸賢も次の図を思い出すはずだ。
南倫夫 詰パラ1961.3
例題の【第4図】は、南作の冒頭の2手を削って1筋右に寄せた図であることは明らかだ。
これ1つなら偶然ということも考えられる。
しかし、敬愛する先輩である妻木作の改竄図らしきものなど、他にもいくつも見つかってくるのだ。
そこでまだ若かった私は「風みどりの玉手箱」(この頁の前身)に上のような例を並べて抗議の意を示した。
その後、村山氏の息子さんからだったか「会いたいといっている」というメールを頂いた。
その頃は真面目に仕事をしていたので忙しかったのと、詰将棋界の大御所なので怖かったのとで(七條兼三を怒らせたわけではないから日本刀で斬られるいうことはないだろうが)会いに行かなかった。
今だったら何を置いても出かけるのに、ちょっと後悔している。
尤も世間一般ではこの本は高く評価されている。
Amazonのレビューも好評だし、ヤフオクの平均落札価格は7949円。
中古市場でも下のような価格だ。アカシア書店では12000円。
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村山さんの著書群から、詰パラにずいぶん昔に連載された(その後一度再掲されたと思います)谷向奇道さん?の「詰将棋解剖学」にいたく感心したことを思い起こしました。
製本化するには短すぎるのでしょう、一本にまとめる動きは一度もなかったのですが、盤面の駒の意味(その駒があることの意味)を掘り下げることから説く内容で、構想派を目指す方にはぜひ読んでいただきたいものでした。
難しい内容ではありません。しかし「解剖学」で基本に立ち返ってみると、新たな着想の原点がここにありました。
名前は知っていましたが未読です。
是非、読んでみたいです。