柏川悦夫『駒と人生』第74番 詰パラ 1959.12改
もう柏川悦夫の作品は全部紹介したいくらい好きなものが多いのだが、それをやっては著作権侵害になるだろう。(わからないが)
そこで好きで好きで仕方ない作品だけを紹介することになるのだが、(入門者ではない)読者の中には「なんでこの作品を紹介せんのだ。鑑賞力がおかしいんとちゃうか?」と憤慨している方も少なからずいらっしゃるに違いない。
そういう場合はサイドバーで原稿募集中と宣伝しているが[A]忘れ得ぬ詰将棋のカテゴリーで、“なぜこの詰将棋が素晴らしいのか”を言語化した上で、投稿してください。お待ちしています。
持駒豊富。63馬がよく効いている。
43飛がいなければ45馬の1手詰。
さては63角成に43飛と受けた局面か。(そんな訳はない)
45金、36玉、35金、同玉、
58桂と打ってみたいが55玉と躱されて困る。65から76への逃走を防ぐ手段がない。
そこで45金。
63馬の利きを塞いでしまったので、27への逃走路ができている。
そこで35金とするよりない。
金1枚を費消して46→35に玉を移動させた結果になっている。
その目的は……
47桂、
同飛成は5手詰。(後で出てくる)
46玉と戻るのは36金、同龍、64馬の3手詰だ。
同と、45金、36玉、46金、同玉、
同ととさせて、また金1枚を費消して35→46に玉を動かす。
今度は……
58桂、
先程と異なり、55玉と逃げても47桂と打てる。
以下、65玉、66金、同と、75金までだ。
同と、45金、36玉、35金、同玉、
再び同ととさせて、また金1枚遣う。
その目的は……
47桂、
まだ金が残っているので46玉は先述した3手詰。
この桂で玉の死命を制しているのがお解りだろう。
同飛成、45金、36玉、46金、同玉、
最後の1枚でピッタリ足りていることの喜びを感じる。
35→46に玉を動かして……
45馬 まで23手詰
4手で玉を動かして1手仕事をする。
その繰り返しがなんともいえない楽しさを醸しだし、極上の解後感を与えてくれる。
解後感を味わうのは解答者・鑑賞者の脳だから、なかには「なんだ易しい」とか「実戦に役立たないな」と感じてしまう脳もあるだろう。
そういう脳に対しては、密かに同情することしかできない。
縁なき衆生?
切れ味鋭い短編が好きだった人が、長編趣向作を面白く思うようになり、それが「ここまでくどくなくてもいいのでは?」と感じるようになって、軽趣向作がやたらと好きになる。
こんな行程を辿る人も多いのではないだろうか。
多分蛙さんもそんな1人かも知れない。
⇒軽趣向作好作選(via.冬眠蛙の冬眠日記)
さて、この図ですが、『駒と人生』#74に間違いはないのですが、『詰将棋半世紀』第1部駒と人生の#74です。詰パラ掲載時と元祖『駒と人生』#74の図は以下のものです。
「47桂、同と」のない21手詰。
駒取りもなくなり、リズムも良くなって、一段と改良されたことが明瞭です。
それにしても発表作を作品集にまとめるために改良する人はまだたまに居ますが、作品集が出版された後まで改良を続けている柏川悦夫とは本当に偉大な作家です。
発表時余詰だった作品も修正するのが面倒だとか言っている人のために、柏川悦夫の爪の垢を残しておいてあげて欲しかった………。
「詰将棋入門(119) 軽趣向」への1件のフィードバック