Judge : 武島広秋
優秀作
【第10問】あとれい
正解 43銀、33玉、32銀不成、同玉、33銀、23玉、22銀成、同玉、23銀、13玉、32銀不成、24玉、23飛成まで13手詰
まずは打った銀を直後に不成で捨て、続いて打った銀を直後に成って捨てる。
23に利かすという同じ意味付けで成不成の対比を実現しているのが見事です。
こういう簡単な仕掛けで面白い手順を思い付くセンスが、詰将棋創作で最も重要な能力ではないでしょうか。
佳作
【第12問】ぬ
正解 43香、31玉、42香成、同玉、34桂、52玉、42桂成、同玉、44香、31玉、41香成、同玉、43飛成、31玉、41龍まで15手詰
3連続で打った駒を直後に捨てた結果、初形から52歩が消えただけ。
1枚の駒を消すために、玉を一旦42に呼び、再度41に戻すという回りくどさが堪りません。
特別賞
【第16問】kisy
正解 54香、43玉、53香成、同玉、55香、44玉、53香成、同玉、54香、42玉、53香成、同玉、55香、63玉、53香成、同玉、64銀成、同玉、55角、同玉、53龍、66玉、64龍、56玉、65馬まで25手詰
間に無駄な手を挟まずに香打ち換え4連続とは驚きました。
中村雅哉氏の香打ち換え17手詰を極限まで拡張したような作品。
手順を思い付いたとしても、邪魔駒消去の順番を限定させ、変化を割り切って完全作まで漕ぎ着けるのは並大抵のことではないでしょう。
しかし本当にこの図で発表してしまって良かったのでしょうか?
もちろん実現するだけでもかなり高難易度なのはわかりますが、もっと配置をスッキリさせて収束を短くまとめれば、後世に残る名作になっていたに違いありません。
コメント
【第1問】あとれい
正解 31飛、22玉、33角成、31玉、32銀まで5手詰。
限定打の飛車が直後に消える構成。
51角を15角にすれば以遠打の選択肢が増えて、より限定打感が出ると思いましたが、そうすると41飛でも詰むので、51角が唯一成立する配置なんですね。
【第2問】あとれい
正解 48飛、同玉、93角、38玉、39角成、同玉、28龍まで7手詰。
飛車を最遠打の角に打ち換え、直後に捨てるダイナミックな手順。
課題とは関係ない部分ですが、初手が焦点捨てになっているところが好感触です。
【第3問】不透明人間
正解 23金、14玉、24金、15玉、25金、16玉、15金、同玉、25飛成まで9手詰。
打った金を3連続でヌルヌル動かして捨てる。
盤面4枚で成立する図を人類で最初に発見した作者の勝ちです。
【第5問】駒井めい
正解 28桂、26玉、27銀、17玉、26角、27玉、36角、26玉、27龍まで9手詰。
4手目わざと銀を残す方に逃げることで2手延命し、あとは打った駒が2連続で玉に取られる展開。
捨て駒と比べて取られ駒は手順が地味になってしまうのは仕方ないでしょう。
【第6問】松田圭市
正解 14桂、23玉、24銀、14玉、23銀不成、同玉、14角、同玉、24馬まで9手詰
初手で打った桂が直後に邪魔駒になり、24銀~23銀と原形消去しますが、24銀も打った直後に邪魔駒になるという連鎖的な構成になっています。
今回の投稿作品の中で、風みどりさんが求めていた課題に最も忠実な作品ではないでしょうか。
(例題1~3は全て打った駒が直後に邪魔駒になっていますが、投稿作品はそうじゃない作品が大半でした)
配置の重さが気になりますが、これ以上良くするのは難しそうで、素材運に恵まれなかった感じがします。
【第7問】天月春霞
正解 67金、同香不成、49桂、同馬、93角、56玉、57角成、同玉、46龍まで9手詰
遠角を直後に捨てて邪魔駒消去するのはよくある手順。
むしろ一番の見所は、初手でいきなり金を捨てる手に対して、香不成で応じるところでしょう。
天月春霞ちゃんの動画はめちゃくちゃ面白いので、詰将棋マニアは全員チャンネル登録すべきです。
【第8問】あとれい
正解 33銀、21玉、11歩成、同玉、13香、21玉、12香成、同玉、13桂成、同玉、31角、23玉、22角成まで13手詰
中編のテンプレ収束素材のような感じですが、34の駒が角になっているところがポイント。
12香成が焦点捨てになって格段に味が良くなりました。
【第9問】あとれい
正解 32歩、21玉、22歩、同玉、23歩、32玉、22歩成、同玉、23銀、21玉、32銀不成、12玉、23馬まで13手詰
5~7手目で打った歩を直後に捨てていますが、そもそも3手目以降の手順が初手で打った歩を消すための手順になっています。
打った駒を消すための手順の中に、打った駒を直後に捨てる手順が内包されているわけです。
【第11問】松田圭市
正解 22角、21玉、11角成、同玉、12香、21玉、22香、12玉、24桂、11玉、21香成、同玉、12桂成、31玉、22成桂まで15手詰
金駒があれば1手詰ですが、ないので14手かけて12成桂を発生させます。
打った駒を直後に捨てるパターンと、直後に取られるパターンの両方を含んだ手順になっています。
【第13問】縫田光司
正解 56桂、47歩、37金、56玉、47金、55玉、43香成、44歩、同馬、同桂、56歩、同桂、同金、同玉、57歩、55玉、67桂まで17手詰
狙いを見破るのに時間がかかりましたが、4手目55玉だと43香成に対して歩合ができないから、56玉と不利逃避的に逃げて47歩を取れせるということですか?
つまり56玉が打った駒(合駒の47歩)を直後に消すための手ということですね。
いかにも作者らしい常人には思い付かないひねくれた発想でした。
【第14問】あとれい
正解 23角、22玉、32角成、同玉、22金、33玉、23金、34玉、24金、35玉、25金、36玉、26金、同玉、28飛、35玉、25飛、36玉、26飛、35玉、36香まで21手詰
玉を2筋に誘導さえすれば28飛で簡単なのに、玉方がうまく躱し続けるため、金を5回も押し売りする羽目になるのが面白い。
角と金それぞれ打った直後に捨てていますが、3~14手目までの全体が、初手で打った角を消すための手順という見方もできます。
【第15問】あとれい
正解 26銀、14玉、25銀、13玉、24銀、14玉、15歩、同桂、23銀不成、13玉、14歩、同桂、22銀不成、12玉、13歩、同桂、21銀不成、11玉、23桂、21玉、31桂成、同玉、32歩、41玉、21龍まで25手詰
23桂~31桂成の部分が課題でしょうか?
序盤の銀歩送りがメインで、収束でたまたま打った駒を直後に捨てる手順が入っている印象です。
優秀作となった、あとれいさんの作品と似たような手順があったような……と思って探したら、1作ありました。
パラ1972.8 吉田健 11手詰(『嬉遊曲』第1楽章31番)
https://shogipic.jp/v/m50
この作品みたいに、持駒銀4枚でまとめるのもいいかも。
もう1作ありました。
パラ1978.12 角建逸 9手詰
https://shogipic.jp/v/m5D
こちらは三段目ではなく二段目での表現。
おかもとさま
縫田・kisy……という参加者名でうっかりしそうになりますが、「詰将棋つくってみた」は本来創作経験が浅い方をメインの対象にした企画です。
あまり厳しい教育方針はいかがなものかと(^^)。
えーと。50年近く前にも、似たようなものを作っていた人がいたんだなぁ、というのを(備忘録的な意味で)書いておきたかったのでした。
もし、教育的(?)に書くとなると、こんな感じかな。
「吉田健や角建逸といった大作家と似た作品を作れるというのは、筋が良いという証拠で、たいへん有望である」
おかもとさん
自分はまだまだ知識が浅いので、過去の作品について教えていただくのはありがたいですし、勉強になります。
余談ですが、創作過程の図を見直していたところ、吉田健作と全く同じ図があって驚きました…。