改訂新版『怒濤』紹介(4)

数回に分けてつみき書店の新刊改訂新版『怒濤』山本昭一詰将棋作品集の紹介をしてきましたが、いよいよ最終回です。

今回は長編作品を紹介します。

長編作品(51手以上)は第76番以降の11局です。
そして作者の愛着を示すタイトルがつけられている作品は6局です。
その6局は以下の通り。

  • 天の河 角の遠打による並び歩の連取り「五月晴」型。
  • 二人三脚 2枚角による見えない歩の連取り。オリジナリティある趣向。七條兼三が飛車ヴァージョンを発表したが余詰。本作も余詰だったが旧『怒濤』では余詰のまま収録。その後パラに平井康雄が修正図を発表、今回はその修正図をさらに推敲したヴァージョンを収録した。
  • 怒濤 飛車の遠打に並び歩の連取り。後の再帰連取りに発展する「取った歩が再現する」をはじめて実現した。
  • スターダスト 角の開き王手による並行2列の歩の連取り。上田吉一をして「仕上げは完璧」と言わしめた。
  • メガロポリス 歩の多重連取り(と金のブロックを連取りする)。森長宏明「新世界」、添川公司「呪われた夜」との三重衝突事件が有名。
  • メタ新世界 941手詰。当時最長手数だった奥薗幸雄「新扇詰」873手詰を超え、最長手数記録を更新した。(2021年現在では4位か?(異論あり))

「メタ新世界」は旧『怒濤』でも5頁を費やして解説してありますが、今回はパラでの結果発表における山本昭一の自作解説を完全収録し、7頁をかけて詳解しました。さらに参考図とその作意も収録してあります。

ぜひ、『怒濤』をお買い求めください。
表紙は山本昭一氏の長女山本彩佳さんに描いていただきました。

さて、今回紹介する1局は『怒濤』にも収録されていない作品です。

『怒濤』の巻末に「修正できなかった作品」として発表原図を載せています。

山本昭一 詰パラ1975.10 (余詰)

この図をみた添川さんから修正図が届きました。

修正不可能?の香ハガシを修正してみました。
玉が3筋によろける4手伸ばしは入れるのが難しかったので、
これを省いて1サイクル40手→36手に変更。
私ならこれで満足しますが、山本氏はどうかな?

山本昭一 詰パラ1975.10 添川公司による修正案

素晴らしい修正図だと思います。
今、作品集に向けて忙しいはずなのに驚きです。
「修正は不可能」と書いてしまった平井さんからは「添川さんに不可能はないんですね!」とコメントが寄せられています。

実は山本昭一にはまだ香剥がしの作品があるのです。
ただし余詰で作意も発表されていません。
しかし、添川さんのみならず世間には凄い人がいるので「作意を推定・修正できますか」と図面を紹介しておくのも面白いかもしれません。
挑戦者を求めます。

山本昭一 詰将棋の詩1981.10 (余詰・作意不明)

「改訂新版『怒濤』紹介(4)」への3件のフィードバック

  1. 四香剥がしの趣向で150手を超える大作はそれほど多くなく、完全作ではたぶん以下の作品に次いで第8位の長手数記録だと思います。

    1. 添川公司「幻想飛行」 351手
    2. 今村修「ラクダに揺られて」 217手
    3. 今村修 211手
    4. 新ヶ江幸弘「渚にて」 207手
    5. 相馬康幸「機械」 203手
    6. 上島正一 201手
    7. 森長宏明「桃源郷」 199手

    ※ 漏れがあるかもしれません。

    1. 修正図の取り扱いについては統一的な見解は全詰連からでているのでしょうか。作者は原作者なのか修正者なのか。
      貴重なリストありがとうございます。
      ところでハンドルネームに「 」はご遠慮ください。

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