無仕掛図式とは初形の盤面に攻方の配置が無いものをいう。
桂馬で手掛かりをつくるものは数が多すぎるので横からの飛車打で手掛かりをつくるタイプの作品をいくつか紹介しよう。
塚田正夫 新青年1939.1
この作品が元祖でかつ傑作だ。
92金と打てるので送りの手筋が使えると62飛と打ちたくなる。
ところがこれが失敗するのだ。
62飛、72金、92金、同玉、72飛成、82金、91金、同玉、81金、同金、92金、同金で1枚足りない。
そこで初手81金が妙手だ。
分かってみればあっけないほど易しい作品だが傑作だと思う。
この紛れ筋を作意に持ってきたのが次の作品。
三枝文夫 詰棋界1956.1
持駒が香の作品を近藤孝も発表したがタッチの差で三枝文夫が先行した。
また塚田正夫作をさらに手を伸ばした作品もある。
森田正司 詰パラ1976.1
もちろんこの作品は正式な発表ではなく、リレー随筆の中で塚田作品の類作で没になったという自作を今どきの言葉で言えば「供養した」もの。
しかし狙いの1手を初手に持ってこないで金合を入れた序の4手は悪くないと思う。アンソロジーに入れるとしたらどちらを選ぶか議論になるところだ。
三枝作の収束をさらに発展させた作品もある。
飯島勉 将棋ジャーナル1982.12
なんだか二流作家のメンタルヘルス(5)を思い浮かべる手順で心が痛む。
もう1作記憶にとどめておくべき基本形の傑作を紹介しておこう。
篠田正人 詰パラ1985.2
この34桂から33に駒を打っていく筋もいくつも作品が作られているが、本作が一番シンプルで美しい。
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「詰将棋雑談(55) 基本無仕掛1」への1件のフィードバック