\(x^2=2\)という2次方程式を次のように解いてみる。
\(\begin{eqnarray*}
x^2 &=& 2 \\
x^2-1 &=& 2-1 \\
(x+1)(x-1) &=& 1 \\
xは1でも-1で&も&ないのは明らかなので\\
x-1 &=& \dfrac{1}{1+x} \\
x&=& 1+\dfrac{1}{1+x} \\
\end{eqnarray*}\)
ここで右辺の\(x\)に右辺を代入する。
\(\begin{eqnarray*}
x&=& 1+\dfrac{1}{1+x} \\
x&=& 1+\dfrac{1}{1+\left(1+\dfrac{1}{1+x}\right)} \\
x&=& 1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{1+x}} \\
\end{eqnarray*}\)
再び右辺の\(x\)に \(1+\dfrac{1}{1+x}\)を代入すると
\(\begin{eqnarray*}
x&=& 1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{1+x}} \\
x&=& 1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{1+\left(1+\dfrac{1}{1+x}\right)}} \\
x&=& 1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{1+x}}} \\
\end{eqnarray*}\)
これを無限に繰り返すと…
\(x=1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2\cdots}}}}\)
この形の分数を連分数という。
この連分数を途中まで計算すれば、それは\(x\)すなわち\(\sqrt{2}\)の近似値になる。
\(1+\frac{1}{2}=\dfrac32\)
\(1+\frac{1}{2+\frac12}=\dfrac{7}{5}\)
\(1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac12}}=\dfrac{17}{12}\)
\(1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac12}}}=\dfrac{41}{29}\)
\(1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac12}}}}=\dfrac{99}{70}\)
\(1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac12}}}}}=\dfrac{239}{169}\)
\(1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac12}}}}}}=\dfrac{577}{408}\)
さて、ここでちょっと立ち止まって考えてみていただきたい。
\(x^2=2\)
という方程式を解いて
\(x=1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2\cdots}}}}\)
という解を得たのだが、2次方程式の解は2つ有るはず。
つまり上の連分数が\(\sqrt{2}\)になるのはわかるとして、もう一つの解、\(-\sqrt{2}\)は一体何処に行ってしまったのだろう。
(追記2022.3.22)
上のエントリーは馴染みやすいかと \(\sqrt{2}\) で書きましたが、
黄金比の \(\varphi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\) でも同じです。
\(\begin{eqnarray*}
x^2 &=& x+1 \\
xは0&で&ないのは明らかなので\\
x &=& 1+\dfrac{1}{x} \\
右辺の&x&に右辺を代入すると\\
x &=& 1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{x} } \\
x &=& 1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{x}} } \\
x &=& 1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{x} }} } \\
x &=& 1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1\cdots}} }} } \\
\end{eqnarray*}\)
さてこれが\(\varphi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\) の連分数展開ですが、
もとの2次方程式のもう1つの解
\(\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\) は何処へ行ってしまったのでしょう?
(追記2022.3.25)
Tweet
\(x+1\)で割らずに\(x-1\)で割って変形すると、
\(-x = 1 + 1 / (1 – x)\)
となるので、同様の連分数が得られます。
コメントありがとうございます。
その場合でしたら逆に\(\sqrt{2}\)は何処に行ってしまったのでしょう?
※本文に追記しました。
いつも楽しく拝見しています。
漸化式にして、いろんな初期値からスタートさせてみました。
基本、ルート2に、吸い込まれるように、収束していくようです。
一方、マイナスルート2は、吹き出されるようです。
収束しやすい解が目立っている…、のでしょうか?
KSさん。コメントありがとうございます。
私も一応考えるところはあるのですが、そろそろ数学の先生がコメントしてくださるのではないかと期待して待っているところです。
途中経過で省略している項を
Rn(x) とすれば
n→∞のとき Rn(√2) → 0
n→∞のとき Rn(-√2) → -2√2
となっているのでは??
\(R_n(x)\)はどういう式になるのですか?
※コメント欄でも¥(と¥)で囲むとTeXが使えます。
\(\frac{A_nx+B_n}{C_nx+D_n}\)
n回代入した連分数を整理とすると、こんな形になる。
これから、対応する、3/2, 7/5, 17/12 , … を引く。
まだおっしゃりたいことは理解できていませんが、もしかしてちゃんと両方でてくるということでしょうか。それなら私の考えていることと同じかもしれません。
ちなみにこの話はこちらに続きます。
https://kazemidori.hatenablog.com/archive/2017/08/29
整数でない実数\(x\)に対し、その連分数展開は一般に以下のように定義されるようです。
即ち、\(x = a_0 + \frac{1}{x_1}\)(\(a_0\)は\(x\)を超えない最大の整数で、\(x_1 > 1\))と表し、さらに\(x_1\)が整数でなければ\(x_1 = a_1 + \frac{1}{x_2}\)(\(a_1\)は\(x_1\)を超えない最大の整数で、\(x_2 > 1\))と表していきます。
これを繰り返して得られる\(a_0, a_1, a_2, \cdots\)に対し(途中で\(x_n\)が整数になった場合\(x\)は有理数なので実際には無理数で考える)、実数列\(a_0, a_0 + \frac{1}{a_1}, a_0 + \frac{1}{a_1 + \frac{1}{a_2}}, \cdots\)は\(x\)に収束することが示されます。
※このことの証明の流れは、たとえば以下のサイトが丁寧と思います。
https://examist.jp/mathematics/integer/renbunsuu-zenkasiki/
この証明の中で、各\(x_n\)が\(1\)より大きいことが効いていて、それではじめて連分数展開が一意な値に収束する(定義が意味を持つ)ことになります。
\(x_n > 1\)を仮定しない場合にどうなるかが記事の例で、具体的には「これを無限に繰り返すと」のところで\(1+x > 1\)即ち\(x > 0\)を過程しないと直後の連分数展開は収束しません。
よって\(-\sqrt{2}\)は何処へ行ってしまったのだろうの問いかけに対し敢えて答えるならば、\(-\sqrt{2}\)は消えたわけでなく、連分数展開が\(\sqrt{2}\)に収束するのを邪魔している、になろうかと思います。
コメントありがとうございます。(気づくのが遅くなってごめんなさい)
「無限にくりかえす」ところが関門で\(x>0\)でないと許されないということですね。
紹介してくださった証明は難しそうですが、そのうち気合を入れて読んでみます。
最後の「\(-\sqrt{2} \)は消えたわけでなく、連分数展開が\(\sqrt{2}\)に収束するのを邪魔している」というのは文学的すぎて、よく理解できていません。