詰将棋つくってみたの課題24が罠のある詰将棋ということで、ちょっと雑談をしよう。
まず誤解者が解答発表をみての反応には大きく二通りあると思われる。
- おぉ! そうだったのか。やられたぁ。これは素晴らしい!
- あれ? ちゃんと詰ましたのになんで誤解なんだヨ!
作家は当然ながら上の反応をめざした創作をしなくてはならない。
下の反応は変別がらみででてくる誤解だ。これは避けられない場合もあるが……。
筆者は昔、誤解狙いで「変化曲詰」という創作を試みたことがある。
つまり一見曲詰なのだが、実は捨合をすると長くなり駒は余らないが曲詰にはならない。
想定される読者の反応は次のようなものだろう。
あれ?ここで間駒すると手数かかるみたいだけれど、まぁ曲詰が作意だよね。
(解答発表をみて)
なに?俺が誤解だって。
気を遣って曲詰になるように解答してやったのに、なんて仕打ちだ。
もうこの作者のアンチになってやる。
投稿は見合わせました。わざわざ評判を落としては作品を発表する意味がない。
微妙なのが次のような場合。
- 間駒非限定のようにみえて実は限定されていた。
- 打ち場所非限定のように見えて実は限定されていた。
- 成/不成非限定のように見えて実は限定されていた。
これらは作家側に与えられた許容範囲を逆手にとって誤解を狙ったもので、解答者は場合によっては納得いかない感を持つことになる。
文章だけではわかりにくいので具体例も出そうか。
摩利支天「サイレントリベンジ」 詰パラ2011.9
本作が誤解者を生んだのは2手目72歩合。
作意は香合だが歩合でも作意と同じように詰む。
「間駒非限定なのかな。ま、そういう作品もあるし」
それだったらわざわざ香合としないで安い駒である歩合を選択するものだ。
ただし歩合だと5手目73角でも84角でもよい。
「打ち場所非限定なのかな。ま、そういう作品もあるし」
しかし、実は2手目歩合だと52銀、同玉、74角成で早く詰むのだ。
歩合の場合の作意手順は変別(変化別詰)ということで、この順の解答は×となる。
これがもし間駒非限定は絶対に許されない、打ち場所非限定は絶対に許されないという規定だったら、「この順はおかしい」と気づけるはずだということだ。
さて、前のエントリーでも書いたが、応手の見落としというのは解答者の経験・知識による。
中合や捨合を見たことない人だったら、単純な捨合でも誤解をしかねない。
逆に百戦錬磨の詰パラ解答陣を相手にするのだったら応手で誤解を期待するのは難しい。
添川公司 詰パラ1988.6
本作は解答者26名(無解を除く)のうち9名を誤解に沈めた傑作だ。
いや誤解しないでほしいが、本作は誤解者を産んだから傑作なのではなくて、作品自体が抜群に面白い。
添川公司作品の中でも特に好きな作品の一つだ。
誤解者はおそらく銀合の所で香合をして65手解の答案を提出したのだろう。
デパート発表だから出題時に手数も明示されているのに誤解者を生み出すのだから凄い。
攻方の手で誤解者多数という作品ではやはり柏川悦夫の2作品が印象に強く残っている。
柏川悦夫 『詰』第95番 詰パラ1965.4
結果発表の表の読み方に自信がないのだが、正解者8名に対し、誤解者13名ということのようだ。
誤解者は冒頭の2手を省略した31手解と想像できる。
詳しくは下のエントリーを参照のこと。
詰棋書紹介(94.2) 特別懸賞出題[2] 結果発表<第2問>
柏川悦夫 『新まりも集』第100番 近将1964.8
『看寿賞作品集』の解説によると、解答者の5割が「13歩成、同馬」の2手を省略した29手の解答で誤解になったとのことだ。
こちらも詳しくは下のエントリーを読んでください。
詰棋書紹介(94.4) 特別懸賞出題[2] 結果発表<第4問>