詰将棋入門(12) 金知恵の輪

久留島喜内 「金知恵の輪」 将棋妙案 第69番 1757

久留島喜内の「易しいけれど楽しい」作品群の中でもっとも有名な作品がこの「金知恵の輪」と前回紹介した「銀知恵の輪」だろう。

73手詰。「銀知恵の輪」よりは少し難しい。
しかしこれも筆者がすぐ解けたのも本当だ。

是非,盤に駒を並べてパズルとしての詰将棋の面白さを味わっていただきたい。

はじめに盤面を広く眺めることにする。

11飛が質駒にしているのはどうやら61桂のようだ。
(なぜなら25に玉はいかなそうだし,52銀を移動させるのは難しそうだ。この駒は飛車を取る駒に違いない。)
61桂を取るためには21香と51角が邪魔なので,この2枚を移動する必要がある。

さらにその入手した桂馬の使い場所はどこだろう。
27が怪しいとわかる。(鍵であろう49馬と67龍の焦点だけになおさら)
龍か馬を動かすために使うことが予想できる。

さて,本手順を進めよう。

34銀、同銀、44金、55玉、

まずは舞台づくり。3手目35玉と逃げるのは銀をすぐに獲れる。


54金打、65玉、64と、75玉、74と、

香を入手。

65玉、64金、55玉、54金右、45玉、44と、35玉、34と、
銀を入手。

45玉、44金、55玉、54金左、65玉、64と、75玉、84銀不成、

持駒が豊富になったので,51角を移動させる。
同玉なら74と,93玉,94銀,82玉,83と以下。
持駒「銀香」なので詰む。


同角、74と、65玉、64金、55玉、54金右、45玉、44と、35玉、24銀、

次に21香の移動を計る。

同香、34と、45玉、44金、55玉、54金左、65玉、61飛成、

これで中間目標であった桂馬の入手に成功した。

桂馬が持駒にあるうちに76香としないと86玉と躱されて困る。
もっとも作者は先に27桂として角を入手して詰むようにできないか考えただろう。

同銀、64と、75玉、76香、

狙いの27桂で守りの馬を動かす。

同龍、74と、65玉、64金、55玉、54金右、45玉、44と、35玉、27桂、

後は質にしてある龍を獲って収束だ。

同馬、34と、45玉、44金、55玉、54金左、65玉、64と、75玉、76歩、

86玉、87飛、76玉、77飛、86玉、87金 まで73手詰

さて手順の論理性は明確なので,残る問題は76香のタイミングはどうやって限定されているかだけだろう。

まず25手目84銀に同玉の変化には持駒銀香が必要だからこれ以前はダメ。

26手目84同角の後76香としてしまうと,同龍となるので74とに86とと躱されて詰まなくなる。
このとき持駒に桂馬があれば98桂で詰むので,結局桂馬を入手した後の作意手順のタイミングしか86香とは動けないのだ。

詰ますだけなら,こんなことは考えなくてもよいが,創る立場になったらこの手順前後を避ける論理をきちんと構成しておかないと余詰の烙印を押され詰将棋の資格を喪失する。
解く場合も「なぜこの詰将棋が成立しているのか」を調べていくと,作者が工夫したところが見えてくる。これを詰将棋を鑑賞するという。

将棋妙案についてもっと知りたい場合は次の情報にアクセスすると良いだろう。

これらの江戸時代の詰将棋については次の文献を参照している。

  • 門脇芳雄 「続詰むや詰まざるや」 1978 東洋文庫
  • 三木宗太 「江戸詰将棋考」 1987 将棋天国社
  • 二上達也 「将棋図式集(下)」 1999 ちくま学芸文庫

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