詰棋書紹介(14) 続詰むや詰まざるや

続詰むや詰まざるや 古典詰将棋の系譜


門脇芳雄 平凡社 東洋文庫335 1978.7.20

詰将棋入門で再三引用してきた本をやっと紹介する順番が回ってきた。
東洋文庫としては門脇芳雄による詰将棋の本は「詰むや詰まざるや」に続くものなので「続詰むや詰まざるや」となっているが、2冊とも書名としては誤解を招きかねないものだ。
「詰むや詰まざるや」は元々は三代宗看の「将棋無双」の別名。だから書名もよくみると「詰むや詰まざるや 将棋無双/将棋図巧」となっている。
「続詰むや詰まざるや」も内容としては小さく書いてある古典詰将棋の系譜とした方が正確だ。

つまり「詰むや詰まざるや」は無双と図巧あわせて200局を解説した本で、「続詰むや詰まざるや」は無双・図巧も含めて、初代大橋宗桂の歴史第1号局から昭和30年の奥薗幸雄「新扇詰」までダイジェストで200局選んで解説した本ということだ。

詰将棋ファンだったら2冊とも必読書だ。
ツメキ党が政権を取った際には、国民の独習指定文献に指定されるのは間違いない。

さて1局紹介するのは残念ながら不詰なのだが九代宗桂の作品。

九代宗桂 将棋舞玉 第1番 1786

図巧1番のアイデアの別展開であることは明らかだ。
しかし残念ながら18手目34角合ではなく43角合で不詰。

この「将棋舞玉」をもって献上図式の伝統は途切れる。

引用しよう。

看寿・宗看の傑作は、彼等と肩を並べる家元棋士たちにとって憧憬であり、絶望的な脅威でもあった。彼等も『図巧』や『無双』からインスピレーションを受けて、秀れた作品を作ったが、看寿・宗看の作品はそれよりもさらに高い絶壁として彼等の前に立ちふさがったのである。『図巧』や『無双』の重圧に喘ぎながら、それでも彼等は献上図式を作らねばならなかった。八代宗桂と九代宗桂はこういった苦境に立たされたのである。

献上図式の伝統が詰将棋のレベルを飛躍的に高めたのは間違いないだろうが、伝統を作った大橋家がその伝統に苦しめられたことも想像に難くない。

その伝統を終わらせた九世名人大橋宗英を題材にした小説を黒川一郎が書いている。(「将棋浪曼集」に収録されている)


追記(2020.8.24)
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「詰棋書紹介(14) 続詰むや詰まざるや」への2件のフィードバック

  1. 大学に入ったもののすぐに飽きてしまって(笑)渋谷をウロウロしていたときに、移転前の大盛堂で見つけました。
    僕が詰将棋に興味を持つきっかけでした。同じ年の9月号から詰パラを読み始めましたが、著者の門脇さんがフェアリーを担当していて、ちょうど左真樹さんがデビュー。フェアリーに興味を持ったのもそれがきっかけでした。
    門脇さんにはその意味で恩人です。

    1. 京大さぼって渋谷までウロウロとは随分壮大な寄り道ですね!

      なんか最近左真樹さんの作品集が纏められるとかききましたが楽しみですね。

      ひっぽさんもそろそろ作品集を考えてみては?

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