伊藤先生の「詰将棋の創り方」からの孫引き2回目は野口益雄篇です。
よい短編詰将棋の条件について次の3つをあげています。
- 内容が良い。つまり手順が充実しているということ。
わかりやすくいえば捨駒が多いこと。仮に11手詰だったら最低3手は巧い捨駒があることが望ましい。 - 新鮮味があること。
これか数多くの詰将棋を鑑賞していなければ分かりにくい。 - 完成度が高い物。
形が良いとか、詰手順に緩みがない、紛れや変化が適当に含まれていること。
【図1】と【図2】は数百年前からある詰将棋。
ともに好手は一つ。3手と5手。
このような単純手筋物はすでに開発され尽くしているので新題は作れない。
二つ三つの手筋の組み合わせ形で新鮮味を出すべき。
【図3】は駒を並べている内に思いついた形。
【図3】
34桂、同歩、23金、21玉、31飛成、同玉、33香、21玉、32香成、11玉、22成香まで11手詰。
手順に面白みがない。
桂を捨てる手を角を捨てる手に変えたのが【図4】。
【図4】
34角、同歩、23金、21玉、31飛成、同玉、33香、21玉、32香成、11玉、22成香まで11手詰。
しかし、初手より23金、21玉、12角、11玉、313飛成までの余詰が生じている。
角は持駒でなく置駒にする。
さらにいきなり34角成ではなく、12銀の打ち捨てを加える。
【図5】
12銀、同玉、34角成、同歩、23金、21玉、31飛成、同玉、33香、21玉、32香成、11玉、22成香まで13手詰。
これを完成図とする。
【図6】も単純手筋物。
これから連想して次の図にする。
22金捨てを22角成と捨てる筋に変更。
22角成、同銀、21銀、23玉、32馬まで5手詰。
さらに弄って次の図になる。
【図9】
23銀、同金、24桂、同金、22角成、同銀、21銀、23玉、32馬まで9手詰。
これを完成図とする。
2手目同玉の変化に44角が役立っているのがわかってもらいたい点。
(序盤で活躍した駒を捨てる展開にしたい)
もう一つ単純手筋からの手直し方法をお目にかける。
【図10】
11飛、同玉、13香、21玉、12香成まで5手詰。
これでは詰将棋と言えないが、ここから発展させていく。
【5図】で用いた「角による歩の吊り上げ方法」を取り入れたのが【図11】
【図11】
24角、同歩、33角成、31玉、21飛、同玉、23香、31玉、22香成まで9手詰。
初手の24角は容易に発見できるので面白くない。偽装工作として2手増やす。
【図12】
22角、42玉、24角、同歩、33角成、31玉、21飛、同玉、23香、31玉、22香成まで11手詰。
まだ満足できない。42飛の形も良くない。
さらに2手増やす。
【図13】
13桂、31玉、22角、42玉、24角、同歩、33角成、31玉、21桂成、同玉、23香、12玉、22馬まで13手詰。
始めに打った桂を後で成り捨てる筋が気に入ったので、これを完成図とする。
野口氏らしく、3作も気前よく創作法を公開しています。
- 捨駒を価値ある駒にする。(桂→角)
- 打捨てより捌き捨て。(角打→角成)
- 序盤でその駒を活躍させておく。
- 逆算しながら狙いを隠蔽工作する。
ここらへんがポイントでしょうか。
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