なんの構想もなく進めてきたこの「詰将棋入門」。
唐突だが第3章に入る。
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第1章 知っておきたい古典の名作
第2章 知っておきたい戦前の詰将棋作家
だったというわけだ。
だんだん詰棋書紹介と被ってきたので第2章はここまでにする。
といっても、「あ、この人を忘れていた」と突然2章に舞い戻る可能性はかなりあるが。
この章に興味のある方は『四百人一局集』を入手されたし。
これまでにも図巧の主要作品は紹介してきた。
第1番、第12番、第49番、第98番、第99番、第100番
せっかくなので、もう少し看寿の作品を紹介していくことにする。
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第3章 知っておきたい図巧作品(追加)
ということになろうか。
谷川先生の本が出て、さらにまもなく平凡社ライブラリからもでるということで原著を入手しやすいだろう。
伊藤看寿 『将棋図巧』第4番 1755
43玉と逃げられそうな形。
52角とこちらから塞いでも結局44が空くので無意味。
25角、24玉は開き王手した際に19圭で龍を抜かれる。
よく見ると43玉には42角成がある。ただし54に逃げられる。
45桂の配置から考えても、46桂と打って54を押さえたい形だ。
もし46金がいなかったら3手詰ではないか。
35金、同金、46桂打、
35金に43玉もあるが65角、53玉、42角成……以下これは詰むだろう。
29龍も動きそうだ。(本当は読まなくちゃダメ)
44玉、35角、同玉、
同金は同桂で簡単なので44玉。となればこの進行は必然だ。
この局面24が呼んでいる。飛車と香者の焦点。焦点の捨駒だ。
24角、
飛香が重なったところで技をかける。
同飛、25龍、
この部分だけを切り取って5手詰が何局作られたことだろう。
しかし、元祖(?)の本作はこれでは詰まないのだ。
このあと、同玉、26金に14玉で手駒が足りない。
【再掲図】
この局面に戻って考える。
ここに手駒を増やす妙手が隠れている。
17角、
24に打ちたい角を17から打つのが妙手だ。
同飛とは取れないし(34金の1手詰だ)、26に捨合するしかない。
(同香とは取り返せないので捨合で良いだろう)
26歩、同角、24玉、15角、35玉、24角、
上の図(7手目24角)と比べてみて、魔法のように持駒に1歩が増えていることが確認できるだろう。
19成桂は(飛車に当てるための他に)桂の合駒を品切れにするためだったと分かる。
同飛、25龍、同玉、26金、14玉、15歩、
この1歩が死命を制する。
ここから後は手数はかかるが後片付け。
手なりに進めていけば良い。
13玉、22銀不成、12玉、11銀成、13玉、14香、
現代の感覚だと13玉、22銀不成までと終わらせたい気持ちもある。
しかし、それは好みというか流行というか、人それぞれの考え方の違いであろう。
本局は29龍を働かせるために序に長い変化を作ってある事情もあり、単純に短くカットすることは難しい。
同飛、同歩、同玉、15飛、24玉、25金、33玉、34金、32玉、
ここまでくれば残り5手詰。
12飛成、41玉、31と、同銀、52龍 まで39手詰
本作は「1歩をどうやって入手するか」というナラティブなのだ。
いきなり24角ではなく、17角~26角~15角~24角と華麗に活用するのが謎を解く鍵となる。
『この詰将棋がすごい!2019』に「1歩入手方法の研究」という小論を書いたのだが、この作品を入れ損ねてしまったのは痛恨のミス。単に遠くから打つ「黄色っぽい部屋」でなく、方向が違う本局の17角を入れるべきだった。
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