田中至の『詰将棋考』の第4部が「私の作図法とその歩み」となっており、何回かに分けて紹介する。
第1章は「逆算式創作方法」なのだが、どうもこの章は別の論考で読んだ記憶がある。
そちらの方で紹介したいので今日は第2章「Bの字形」を読んでいこう。
この図からスタート。
44には玉方の駒を配置するば良い。
すでに、飾り駒の心配がないのが大きい。
ただし初手に67桂とする手順前後が生じている。
そこで持駒の桂を65に配置して手順前後を消す。
さらに56銀の軽手を入れた。
ここで2つの方向を考える。
- 飛車を持駒にして、65飛、同桂と桂を呼び寄せる。
- 63に銀を打って、玉を動かす。
飛車を持駒にするのは強力すぎて、早詰が生じるとわかったので、63銀の方向で創作を進める。
64と、同角が入ってだいぶ詰将棋らしくなってきた。
しかし完成にはまだ遠い。
不動駒の53香と44とを動かすことを考える。
44金、同と、53と右、同銀、同銀成、同香、64と以下の17手詰。
しかし、3手目と5手目に手順前後が生じている。
手順前後は一般作と同様、あぶり出し曲詰でも大きなキズではないが、いかんせん気になるので、結局は第5図のように切りかえることにした。
(当時は手順前後は大きなキズではなかったようだ)
この図は第4図と並行して考えた図だが、33金では余詰があり、33とにしなくてはいけないので没にしていた。
この図を採用するのなら33とを34から動かすことを考えたい。
そのためには玉を43から動かしてこなければいけない。
ひらきなおって次の図を考えてみる。
55桂、54玉、53桂成、同香以下を想定している。
勿論実際には55桂に同香でも32玉でも詰まない。
しかし、ここで閃きが来る。
「攻方54桂の配置でどうか」
33飛成、同と、55桂、54玉、53桂成、同香、44飛、同と、64金、同銀、同と引、同角、63銀、55玉、56銀、同馬、65と、同銀、67桂、同馬、46金寄まで21手詰。
創作方法を伝えるのが主眼の例題ですから、完成図にとやかく言うのは筋が違うが、ちょっと駒取りが多すぎて妙味が乏しいように感じる。
このように感じるのも田中至というビッグネームの影響だろうか。
余詰の修正に駒取りを使うのは有効だが、使いすぎないようにとの教訓も伝えたかったのかもしれない。
この字形で不動駒2枚で破綻していないのは流石だが。
総括コメントが的を得たものと感じます。
完成したものが作品レベルになくても、作図方法を知らない方のために、逆算という手段を説明しただけと捉えれば、この図もかわいらしく見えるかもしれません。
たしかに仰るとおりですね。
文章を少し柔らかく変更しました。
元の文章のほうがよかったのに(笑)
正直な話、わたくし的には田中至さん、あまり評価していないのです。簡単に全駒市松なんかを作られる技術は認めますが、詰将棋としての妙味を追及されない姿勢が、自分の求めるものとはだいぶ違っていますので。
せっかく風みどりさんが柔らかくした配慮を、台無しにしてしまったかも。