伊藤看寿 『将棋図巧』第16番 1755
第5番、第12番と同じ傾向の作品。
初手さえ解ればあとは軽快に詰むので、初見の方は是非挑戦されたし。
さて、初手が本局一番の難手だが見えただろうか。
正解は……
24角、
3枚効いているところに抛り込む実に気持ちの良い手だ。
そして気がついてしまえば変化で難渋することもない。
同桂は3手詰。
23玉も3手詰。
一番長い変化は同玉と同とだが、それでも5手詰だ。
いろいろな手を試してみて、このようなすぐ詰む変化に当たれば作意の手応えを感じる。
解答者にはありがたい造りだ。
これらの変化は各自で考えていただこう。(同との変化で23が香の意味が分かる)
で、作意は……
14玉、
16飛は15歩と捨合されて困る。
13飛の一手だが、24玉となって本局の主眼手がでる。
13飛、24玉、34飛不成、
不成の意味は明解だ。
34飛成だと13玉で打歩詰の形になり手が進まない。
打歩回避の不成である。
13玉、14歩、23玉、15桂、22玉、
14歩~15桂と拠点を作成できて、ここからは収束。
次は21香を消去する。
21金、同玉、23香、11玉、22香成、同玉、
ここからは7手詰だ。
浦野真彦の『7手詰ハンドブック』に収録されてもおかしくない完全限定の安心設計。
13歩成、同玉、33飛成、14玉、13龍、同玉、23角成 まで23手詰
13歩成、同玉と進んだところで34飛が邪魔駒に化している。
4手かけて飛車を原型消去して幕。
13歩成に21玉なら12と、同玉で32飛成の両王手も登場。
一見、固くて食べられなさそうなのに、口に入れるとほろりと解けて極上の味わいが愉しめる、そんな料理を連想させてくれる。
すべての駒が役割も明確に天から定められたようにそこに配置されている。
こう感じる作品は名作だと思うのだが、この感覚を上手い言葉に出来ないものかな。
月並みですが「天の配剤」、あるいはライプニッツの「予定調和」でしょうか。
なるほど。
どちらもいいですねぇ。