森田正司『春霞』第27番 詰パラ 1959.9
森田手筋のモリタとは森田正司の名前からとっているのである。
巨椋鴻之介をして次の評を書かせた傑作。
巨椋鴻之介 この筋は小生も考えていたのですが、先を越されました。仕方がないので小生は角でやることにします。
25香、15玉、33馬と角を手順に入手できそうな局面だ。
しかし慌てずに16桂とのちの退路を塞ぐのが好手。
16桂、同飛不成、25香、15玉、33馬、26玉、
同飛成とすると25香に同龍の変化もできるが、飛車が入手できるので難しくはない。
不成とすることでこの局面を打歩詰に導くことができる。
従来の打開手段は
- 15角、同飛と退路を開ける
- 17角、同飛成と取歩駒を呼ぶ
- 44馬と捨てて退路を開ける
など色々考えられるが、本図ではどれもうまくいかない。
森田正司はそれ迄になかった手段を作ったのだ。
その順を見ていく。
44角、
44馬と捨てるのではなく、44角と重ねて打つ。
同銀は同馬で銀が入手できるので変化はあるが詰む。
そこで35に間駒だが……。
35桂、
歩合は利かないので大抵の駒は同角と取って27に打てば詰む。
詰まないのは桂合だけだ。
15馬、
桂合をさせておいて、一転15馬と捨てる。
その意味は?
同玉、33角成、26玉、
同玉と逃がすが、33角成とすればもとの26に戻るしかない。
さて、この局面を6手目の局面と比べてみて欲しい。
持駒の角がなくなりかわりに玉方35桂が出現している。
角を消費して玉方35桂を作りだしたことになる。
27歩、
さてこれで待望の27歩が打てて、以下はスパッと収束する。
同桂成、35銀、同玉、24馬 まで17手詰
森田手筋の定義については詰将棋用語の最前線(1)でも取り上げている。
そこでは次のようにまとめた。
- 「取歩駒」が、駒台から盤上の初期位置へ、合駒として移動。
- 「取歩駒」がピンされている場合。この場合には、ピン状態を解除(つまりアンピン)することによって、打歩が取れるようになる。
これが狭義の森田手筋で、「取歩駒を合駒で発生させる」ことを広義の森田手筋と呼ぶ方もいる。
手筋の定義が重要なのではなく、「こんな面白い物語りがある」と新しい分野を開発したことが森田正司の業績なのだ。(「お~いお茶」を作った伊藤園みたいなもの?)その偉大な業績を忘れないために森田手筋という名称があるのだ。
「これは森田手筋か?」という討論がときおりされる。このことは、この物語のバリエーションが豊富なこと・その鉱脈が広大であった証左であるから、結論がどうあれ森田正司を讃えていることに他ならない。
その豊富なバリエーションについては、いずれこの連載で取り上げることになるだろう。
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「詰将棋入門(118) 元祖「森田手筋」」への2件のフィードバック