赤羽守『信濃路』第4番 近代将棋1970.11
赤羽守がデビュー間もなくの頃の作品。1筋から攻めるしか手のない短篇なので、初見の方は解いてみることをお薦めする。
解いてみては……と書いたが、読者の中には17手詰がまだまだ手に余る方もいらっしゃるだろう。
それでは次の7手詰はいかがだろうか。
【7手詰】
12飛成、同玉、13角成、同玉、12飛、同玉、22角成まで7手詰
2枚の角が凝り固まっているので解していく。大駒3枚を豪快に捨てていく小品である。
【再掲図】
本作品の骨格は上記の7手詰なのである。
しかし、初手から同様に攻めると12飛に24玉と逃亡されるのは明らか。
そこでまずは24を埋めることからはじめる。
13桂、12玉、24桂、
23玉は33角成までだから同桂の一手。
24を埋めることに成功して順調に見えるが……。
同桂、21桂成、16桂、
【失敗図】
なんと開き王手に16飛が喰われてしまった。
16飛がとられるのはかまわないのだが、せっかく埋めた24がまた空いてしまったのではなにをやったのかわからない。
そこで作意は収束ブロック7手詰を実現するために24を埋める。24を埋めるためにさらに準備工作をおこなう。
(初手より)
12飛成、
いきなり16飛車を捨ててしまう。
同玉、15香、
強力な飛車を捨てて香車に打ち替える。
鍵は横利きの有無ではなく、その位置。
16ではなく15に打ったのが効いてくる。
21玉、13桂、12玉、24桂、
予定通り、24の逃走路を塞ぐのが目的。
同桂、21桂成、
ここで【失敗図】との差異が明らかになる。
24桂が跳ね出す余地はないのだ。
同玉、
14合はすぐに13角成で早いので21同玉。
これではじめに考えていただいた収束ブロックに突入する。
12香成、
同玉、13角成、
同玉、12飛、
同玉、22角成 まで17手詰
桂馬の打ち替えは利きが存在する場所が変わるというのが意味付けになる。
遠くにいる飛車を近くの香車に打ち替えるというのは新鮮だ。
飛車2枚に香車をすべて12に捨てるのもリズムを生んで興奮を呼び起こす。
赤羽守『信濃路』は短編作家の必読文献だ。
「必殺の赤い羽根の時代」詰パラが届くとまず赤羽守作がないか探す。見つけたら解く。
小林敏樹さんが最近詰パラでも書いていたけど、本当に皆そうだったと思う。
蛇足を幾つか。
紛れ順の16桂は飛車を取る手だから玉方の気持ちになってみればお得な手だ。
では下図のようにしたら
この場合は紛れ順の16桂は玉方の気持ちになれば捨て駒になる。
捨て駒が1個増えるのだから17飛の方が良いという意見も成立しそうだ。
おそらく赤羽守も考えてみたことだろう。
その結果「1つズラして打ち替える」作意手順の味を採ったのだろう。