問題のモンタージュ法について別項に例図つきで解説が書いてあるので紹介する。
今回も筆者の要約。
素材の選定
【A図】は山本武雄七段の作品(「よみうり詰将棋」1959.10.11)
32歩成、同玉、33金、21玉、22金、同銀で【B図】
以下31金、同銀、23飛成、22銀、33桂、31玉、41金まで13手詰
31金の一手に素材の魅力を感じとった私は、まずC図のごとき構図を想定してみた。31金打を香成にかえた。
【C図】の段階で22の駒を銀から馬に替えているのは、既に22金、同馬を想定しているからと推測される。(銀のままだと34香が強力なので簡単に詰む)
構図の決定
【C図】は詰将棋の卵。
馬を22に呼び戻す手筋を加えるべく配置転換したのが【D図】
ところが22金に同玉の変化が詰まない。
この変化を詰むように構図を決定したのが【E図】
3一香成を前提とする2二金の一手に、主眼が移りかわり、山本七段の作品とはねらいをことにする別構想の詰将棋が完成したことになります。
工夫の盲点
さらに馬を13桂、同馬とする工夫をしたのが【F図】
13桂、同馬、22銀、同馬、31香成、以下同じ
金を銀にしたのは、13桂、12玉の変化を詰ますため。
余詰の検討
検討してみると【F図】には
13桂、同馬、32銀、12玉、13飛成、同玉、25桂以下の余詰があった。
これを修正したのが【G図】。
2五歩を置くことによって優占が生じ、詰方2五桂と打つことができなくなる。
優占は里見義周の駒の一般機能表の用語。
結論
【G図】を完成図とする。
「将棋世界」1960.1に発表した。
(「詰将棋流鏑馬」第38番)
後日譚
加藤一二三八段が【H図】を「週間朝日」1960.2.28に発表した。
22飛、同馬、31銀成、同馬、以下同じ
馬の呼び戻しは私の狙いとまったく同じであり、これもモンタージュ詰将棋による縮図かと苦笑せざるを得なかった。
新年号は実際には1959.12には出るのだから加藤九段が村山作をみて【H図】を作ったことは確かにあり得るかもしれない。
このモンタージュ法による作図には、相当な経験と作図力を必要としますので、一般には推奨できません。
推奨できないのは、下手したらただの剽窃になってしまうからだろう。
新作といえるかどうかの判断が難しい。
この例の場合、【B図】から【C図】は持駒の打捨てから配置された駒の捌き捨てに変更している。
これは一般的には改良だ。
持駒は眠っている勢力だが、盤上の駒は既に勢力圏を持っている駒だから価値が高い。
同じ捨駒でも価値が高い駒を捨てるのだから改良だ。
つまり村山作は山本作から31金を素材としてパクって、改良し、馬の移動で作意に統一感を演出して新作に仕上げたという感じか。
しかし山本作13手と村山作11手で終わりの7手が同じ……う~む。
一般には推奨できません
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