伊藤看寿 『将棋図巧』第80番 1755.3
棋力が高い人が作る詰将棋は、変化が難しくて苦労することが多いのだが、本作は珍しく殆ど変化がない。いや勿論あるのだが短い。
玉の位置にも趣向を凝らした『図巧』という作品集の中で5五という特別な位置に玉を配した作品なのに、この易しさは何故だろう?
いきなり冒頭から主題が始まるタイプの作品だ。
どんどん作意を進めよう。
逃げ道がはっきり見えている詰将棋は攻略しやすい。
46に逃げられたら57とが守っていて厳しそうだ。
32銀や51との配置から上辺で収束するのだろうと予想もできる。
44飛成、同玉、54飛としたいが64成銀がなんとも邪魔だ。
まずはこの64成銀を獲ってしまうのが初手だろう。
64角成、同龍、
2手目同玉なら63飛成、55玉、66龍まで。
2手目同香なら44飛成、66飛、74玉、64龍以下。
同龍で趣向が始まる。
今度は飛車の効きが通ったので46玉の心配はない。
しかし、65玉から74玉という左方向への逃走路が生まれてきた。
66銀、同龍、
変化はなし。
これで次に65玉と逃げられても、63飛成、64合、54角で捕まえられる。
さてこれで44銀と打ちたいが、それでは46玉と逃げられる。
46銀、同龍、
そこで44銀の前に46を捨駒で塞いでおくのが手順というものだ。
44銀、同龍、
46が埋まったので44銀と攻めることができる。
同龍の一手で、これで龍一回転の趣向が完成だ。
同飛成、同玉、54飛、43玉、
あとは収束。
素直に進めていけば詰む。
32銀不成、同玉、52飛成、42金、
金合の意味は4手後に判明する。
54角、31玉、41と、同金、
53飛成を防ぐための配置だった41桂を利用した自然な流れで綺麗に飛車も捨てるのが看寿だ。
43桂、21玉、41龍、12玉、21龍、
同玉、31桂成、同玉、32金 まで29手詰
守備駒の軌跡を描くシリーズの1作だが、特に第75番と対になる作品である。
馬は\(3/4\)回転だが、本局の飛車は初手が駒取りとはいえきちんと1回転している。
さて本局には収束に余詰がある。
23手目(41龍と金を獲るところで)
51桂成、32香、41龍、31金、32角成、12玉、22金、同金、同馬、同玉、21金、12玉、32龍まで35手詰
下図は渡辺正裕氏の修正案。
【修正図案】
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