『塚田正夫の詰将棋』の謎

塚田正夫実力制第2代名人の詰棋書を私は4冊持っている。

1冊目は詰将棋と初めて接した時期に購入した『よくわかる詰め将棋』。

残り3冊は図の通りである。

一番左が1974年に発行された『塚田詰将棋代表作』。
中央が1999年に発行された『塚田詰将棋代表作』。
一番右が現在も入手可能な2011年発行の『塚田正夫の詰将棋』である。

(と思って確認したらそうでもなかった)

こちらの方が安く入手できるようだ。

だんだん厚くなっているのがわかると思うが、実は中身はほとんど同じ。

上は1974年版。見開きの右に問題図、左に作意と解説という親切設計だ。
解けないときにすぐに解答が見えて便利だと思う。
最近の裏表の編集は手順を暗記しながら頁を何度も捲ったりしなくてはならず不便だ。
(でも、「自分で解きたいのに答が見えて困る」とクレームが届くんだとなぁ)

そのようなクレームに対応したのか、1999年版は冒頭に図面だけの頁が組まれている。

さらに解説頁でも問題図を再掲し、さらに詰上り図まで入れているので頁数が多くなっているわけだ。

2011年『塚田正夫の詰将棋』では文庫本なので1頁に1題。

出題頁の裏に詰上り図と変化図まで入れているという、最近流行の編集だ。

それで当然ながら、もっとも厚い本になっている。

で、ご覧になれば分かるように、全て同じ問題・解説である。
ということで、『塚田の詰将棋』は買っただけでそのまま本棚にしまい込んだ。

ところが最近、なんで文庫版だけ書名が変わっているんだろうと疑問を持った。

それで、わかったことは『塚田の詰将棋』だけ問題数が減らされているということだ。

『塚田詰将棋代表作』は200局収録されている。

1999年版で表紙に「202題」と書いてあるのは番外2局があるからで、『塚田詰将棋代表作』の2冊は詰将棋の内容に変化はない。

ところが『塚田正夫の詰将棋』は183番で唐突に終わっているのだ。

184番から200番と番外2局はなぜ削除されてしまったのだろう。

頁数の関係だろうか。
いや『7手9手詰パラダイス』など440頁を超している。

塚田正夫の「はしがき」にこうある。
「第一番から二百番まで、比較的やさしい作品を重点的に選んだつもりだ」
この文章が『塚田正夫の詰将棋』ではどうなっているか調べてみたら…
「第一番から、比較的やさしい作品を重点的に選んだつもりだ」
…削除されていた。

削除といえば1999年版に追加された二上九段の序文もまるまる削除されている。
これは次のような件がある所為だろうか。

 なお百九十九番の手順は腑におちないところがある。一つの謎として皆様共々考えてみたい。

なお、最初の謎は答がよく読むと『塚田正夫の詰将棋』に書いてあった。

本書は、日本将棋連盟から昭和52年(新装版は平成11年)に発行された『塚田詰将棋代表作』200問のうち文庫版に適した15手詰以下の問題183問を収録し、再編集したものです。

ちょっと意外すぎて声が出なかった。
17手詰以上は文庫本に適していないという理由だったのだ。
17手以上は読者の棋力にあわないので削除したとかでさえもなく、文庫本のフォーマットにうまくあわないという意味だろう。
そんなもの、そんなものどうにでもなるではないか。

ただし編集者の気持ちが分からないわけではない。
『すなどけい』も新書版という窮屈な編集で、最後の4題は手数が長くフォーマットが崩れた。それでp154のような謎の頁が出現した。
だけど、19局もカットするという選択肢は考えられない。

それにしても作者が色々勘案して選んだであろう作品をごっそり削って本にしてしまうとは……江戸時代や明治時代の感覚だろうか?

ということで、これから購入を考えている向きは『塚田の詰将棋』ではなく

『塚田詰将棋代表作』を買うべし!

最後に二上九段の「腑におちない」といっていた作品がこちら。
どこら辺が問題なのか考えてみてください。

塚田正夫 『塚田詰将棋代表作』第199番 将棋世界1938.11

歩合の時期の非限定のことでしょうか。
分かった方はコメントを。
                                                                                                              

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