風みどりの詰将棋と関係ない話(41) 移動教室の思い出

 中学校には移動教室という子どもを連れて宿泊するという行事がある。自然に触れたり、調理実習をしたり、子ども達が一緒に眠ったり、文科省(当時は文部省かも?)も一時は「7泊8日でやるとよろしい」と推奨していた。しかし7泊8日なんて教員の体力も家庭状況も許さないし、3泊4日が普通だったようだ。今は東京都ではさらに縮小されて2泊3日が多いのではないかな。(真面目に調べたわけではない)

 若い頃は体力があったので3泊4日でも「足りない」という感覚だった。K区に勤務していた時は専用の宿泊施設が八ヶ岳の麓にあった。そこで坪庭から北横岳に登らせようと計画を立てた。初日は移動途中で足慣らしの小さな山(名前も忘れた)。2日目は車山から七島八島のハイキング。そして3日目にメインディッシュの北横岳登山である。6年間勤務したので2回チャンスはあったが、結局一度も北横岳には登れなかった。中日の2日とも晴天に恵まれる、ということがなかったからだ。1日でも雨に降られると削られるのはなぜかメインディッシュの北横岳。なので4泊5日だったらチャンスが3日あるわけで1日はぼーっとする予定でもいける!と考えていたわけだ。

一番恐ろしかった思い出

 どこかの県の少年自然の家で飯ごう炊爨をしていたときだ。急に大雨が降ってきた。屋根があるのは竈の上だけなのでとても全員が雨宿りすることはできない。宿舎まで走っていけと指示を出した。子ども達は雨に叩かれてキャーキャーいいながら宿舎の玄関まで避難した。
 全員が移動しきったのを確認したあと、さてオイラも一人で待っていても雨がいつ止むかわからないので宿舎に移動しようとしたと其の時だ。
 大きな雷鳴と共に、炊事場と宿舎の間に雷が落ちた。
 周りには建物もあるのに、平らな所に落ちるんだと知った。
 いや~、もう少し落雷が遅かったらオイラは黒焦げになっていただろう。もっと怖いのもう少し早かったら子ども達に直撃していたかもしれない。

 夏、雷の危険はちゃんと認識していないといけないようだ。以前「狐」のところでちょっと書いた北海道を歩いていた時も雷は怖かった。なにしろ平らなところを歩いていて落ちるとしたら自分に落ちるしかなかろうという状況。そして歩いて行く方向にバンバン雷が落ちているのがみえるのだ。
 あ、狐の所に書いたけど、山で先頭で引率していて道が分らなくなったときも、誰にも気づかれないようにしていたけど、内心ちょっと怖かったな。

台風が来た時もあったっけ

 そういえば予報ではとろとろしているので、まぁ大丈夫だろうと思っていた台風が、急に速度を上げて移動教室に直撃してくれたこともあったっけ。
宿舎が居住する場所と食堂が渡り廊下でつながっている構造のところで、要するに食堂に行くには外を通らなければいけない。ここが往きはまだ良かったのだが、食事を終えて部屋に戻ろうとすることには暴風と雨でとても通れやしない。松の枝かなんかが折れて飛んできたっけ。台風に食堂に監禁させられた感じ。どうしたんだったっけ?そこは忘れた。翌日の電車も乱れていて東京に帰るのにも一苦労だった覚えがある。でも、なんとかなったんだよな。

モティベーションをあげようと

 オリエンテーリングをわりとしっかりできる所があった。なにしろオープンな場所では引率教員の数も限られているので「本気で探せ」ということはなかなかできない。結局オリエンテーリングとは名ばかりでウォークラリーに毛が生えたような企画で満足するしかない。しかし、そこは一番奥に外に出るルートがあるだけで、そこに一人教員を置けばあとは閉鎖された広大な森という素晴らしい環境だった。パーマネントコースなのだが、実際にやってみるとけっこう難しいポイント(コントロール)もいくつかある。

 そこで生徒達のモティベーションをあげようと、ポイントには「食料カード」を置くことにした。見つけてカードをゲットすると、ポイントの難易度に応じて「野菜」「肉」「カレールー」などが得られる。そう、昼の飯ごう炊爨で作るカレーライスの材料を集めてきてもらおうということだ。一番易しいところに「米」を配置して、米しか見つけられなかった班には特別にふりかけをあげるということにした。肉は一番遠くて見つけにくいポイントに置いてある。

 狙いどおり子ども達は真剣にオリエンテーリングに取り組んだ。ところが、一つだけ予想しなかった事が起こった。1つの班が「肉」のゲットを最重視して途中を飛ばして進んだ結果、最後に時間が足りなくなり「米」をゲットし損ねたのだ。「カレールー」をゲットできなかった班は肉野菜炒めになったが、米がないというのは夜中にお腹が空く。基本的に宣言したことは変更しない原則でやっていたが、このときは悩んだ末にその班にも教員が炊いたご飯をわけてあげることにした。
 しかし行ってみるとそんな必要は無かった。あちこちの班であまったご飯をもらい集めて、ちゃんとカレーライスにして食べていたのだ。ここで「温情のある先生」という評価を得ようと思ったのだが失敗に終わった。

 また別の時だがウォークラリーのモティベーションをあげるために、3位までにはお菓子を賞品に出したこともある。うまい棒1本でも努力してゲットしたものはうれしいものだ。しかし、そのときの教員集団によっては実現できないことも多い。「不公平なのはだめ」と主張する教員がいるとできない。若い人はどうもそういう主張をする方が多い印象だ。真面目なのかな。

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