上田吉一『極光21』第88番 詰パラ1980.10
作意は軽快な軽趣向。しかし実際に解くのはなかなか手ごわいかもしれません。
まずは作意手順を並べて、楽しむことにしよう。
84角、71玉、73飛成、72馬、
4手目にして主役の龍と馬が出そろった。
ここまでに変化もあるが、それは後で片付けることにしよう。
83桂、81玉、82歩、同馬、71桂成、同馬、
83龍、82馬、
7筋から8筋へ舞台が移った。
73桂、71玉、72歩、同馬、81桂成、同馬、
74龍、
桂打~歩打~桂成のステップが再び繰り返される。
ここで73龍では72馬で4手目の局面から持駒が減っただけ。
74龍と手を変える必要がある。
73歩、同龍、72馬、
中合が登場してまたも4手目と類似の局面。
83桂、81玉、82歩、同馬、71桂成、同馬、
83龍、82馬、
馬を揺り動かすステップが再び踏まれる。
73桂、71玉、72歩、同馬、61桂成、
35手目は81桂成では次に73龍でも74龍でも持駒が減っただけの局面になるので失敗。
手を変える必要がある。
そこで61桂成だ。
同馬、72歩、同馬、同龍、同玉、
主役の龍馬が消えてサッパリした局面。
あとは収束だ。
74香、81玉、72角、82玉、73角成、71玉、
81角成、同玉、72馬まで49手詰
74香と打ってみれば意外に玉は狭い。
入手した角は綺麗に成捨てて見事な収束だ。
さて、ここから鑑賞にはいろう。
この美しい作意手順を成立させている変化と紛れを確認していく。
まずは7筋から8筋へと踊る桂歩各2枚を消費する手順を2回繰り返す仕組みを理解しよう。
それは1回目が終わった後に収束入る順–61桂成がなぜ詰まないかを確認すればよい。
(17手目)61桂成、
同玉、72龍、同玉、
【失敗図】
たしかに全然詰まない。
【再掲図】
【再掲図】で74香と打てることが非常に大きいということだ。
持駒の桂桂歩を消費して玉方74歩を原型消去するのが目的だった。
次に変化を確認していく。
まずは2手目。84角に捨合されたらどうなるのか。
(2手目)73香、
同飛成、51玉、53龍、62歩、43桂、41玉、
31桂成、同玉、
【変化図】
なかなか手ごわい。
以下32歩と叩けば同玉なら24桂、躱してもこれだけ持駒があれば手間はかかるが詰むことが分かる。
次は4手目の間駒だ。
81玉は93桂、同歩、82歩以下。
72香合は色々あるが93角成と邪魔駒消去して、83桂~82歩~84桂が簡単か。
そこで横に利く駒が必要だが72金合では83桂、81玉、82歩、同金、71龍までで寧ろ早い。
そこで横にも利くし斜め後ろにも利く駒が必要になる。
馬の移動合が確認できた。
16手目72歩に62玉は?
(16手目)62玉、
61桂成、同玉、63香、
これは案外簡単だった。
香を取って63香から精算して金を手駒にすればOK。
さて最後は2巡目に進めるために73歩の中合がどうやって成立しているかだ。
次図は19手目の局面。
中合せずに72馬だったら?
72馬、
83桂、81玉、82歩、同馬、73桂、
73に中合しないと73桂と打つことができて早く詰む。
まだ手数はかかるが難しくはない。
動く将棋盤の変化には最後まで入力してあるので確認されたし。
では最後の最後に73歩の中合ではなく73桂だったら?
73桂、83桂、62玉、73龍、51玉、53龍、
62歩、43桂、41玉、31桂成、同玉、33龍、
32金、23桂、
【変化図】
73桂には同龍と取らずに83桂で詰む。
【変化図】で23桂と打てるのは73の中合の桂を取ったから。
作意の73歩合だったら、83桂と攻めてもこの局面で桂馬をもっていないから不詰というわけだ。
これらの変化・紛れを調節する配置を探し出してはじめて2巡目が成立する。
作意手順だけ見ると31飛が不動なのが気になるが、この飛車は82馬の形で(72歩、同馬をせずに)61桂成とする余詰に対処した駒がだ、このように調べてみると変化を詰ます役にも立っている。
苦心の配置に間違いない。